高学歴のリア充人間でも犯罪を犯す理由とは? 1万人以上の犯罪者を心理分析した出口保行インタビュー
■監禁事件が起こる背景とは?
――ここで最近話題となっている事件について質問させていただきます。この3月には2年前に埼玉県朝霞市から少女を連れ去り監禁していた大学生の男が逮捕されました。4月には、10代少女を誘拐して8カ月一緒に暮らしていた県職員の男が逮捕されました。こういった監禁事件が起こる理由については、どう思われるでしょうか?
出口「普通、支配欲や征服欲は、誰だって持っているんですよ。たとえば、リーダー性を発揮するのは、社会の中では重要なこと。ところが、監禁事件や強制猥褻を起こす人間というのは、パーソナリティが一定していて、非常に自信がないタイプが多いんです。『同世代や対等であると思える人たちは、絶対に自分を相手にしてくれない』という思いが強いんですよ。それは、歪んだ承認欲求なんです。いずれにしても、そういったことを背景として自分より体力的に年齢的に圧倒的に下の人間をターゲットにして、一方的な支配欲を満たすために監禁したり、性的欲望を満たすのであれば強制猥褻に発展したりすることはよくあります。パーソナリティは一緒なんだけれど、そこに何の欲求がぶら下がって来るかで犯罪行動が変わって来ます。たとえば、社会に対する敵意発散であれば放火になります」
――朝霞事件の寺内樺風容疑者は、イケメン、実家がお金持ち、千葉大の学生で頭も良かった。見た目はエリートで恵まれていている彼は、何も劣等感を持つ必要がないのに、どうしてこんな事件を起こしてしまったのか? と思うんですが……。
出口「それは、他者評価の話なんですよ。他者評価と自己評価はまったく違います。はたから見たら、すごく恵まれているけれど、じゃあ恵まれている子どもは少年鑑別所に入って来ないかといえば、入って来るんです。高学歴で一流企業に勤めていて、ある程度の役職についていても、犯罪を犯して捕まっている人などいくらでもいます。自分が思っているよりも、他者評価の方が低いと感じた場合、不満を持つんです。『自分はもっと高く評価されるべき人間なのに他人からは認められていない』というように、他者評価と自己評価の落差が起きる。だから、はたから見て、恵まれていようが優秀だろうが、自己評価低い人間は、非行にでも犯罪にでも走ってしまいます」
――じゃあ、そういう人は、結局どういう風に認められたいんでしょうか?
出口「その時にその人が何を求めるかでしょう。お金を求める人は、会社で横領に走る場合があります。そんなことをすれば、すぐにバレるものなんだけれど、『お金があれば』と視野が狭くなっているからその場での犯罪に走ってしまうという場合が多い」
――最近は昔に比べて犯罪件数はどうなんでしょうか?
出口「全体的に犯罪は減り続けているし、少年非行なんて圧倒的に減り続けているでしょう。総数で言えば昔の方が多いけれど、それも認知件数ですからね。警察が認知した数の話しだから、実際のところはわかりません。少年非行なんて昭和58年が第3のピークからガタ減りです。少子化で子どもがいないから単純に減っているというのもあります。だから今、増えているとか減っているとかの議論をしてもあまり意味はないかな」
テレビやネットでは犯罪の凶悪化・増加を訴える報道がさかんだが、実際には犯罪件数は減っているのだ……だが、監禁事件をはじめとする理解に苦しむような奇妙な犯罪が目につくのはなぜだろうか? 次回は、出口教授に現代の犯罪の病巣について語っていただく。
(取材・文=白神じゅりこ)
●出口保行(でぐち やすゆき)
東京未来大学こども心理学部長教授。犯罪心理学者(元法務省心理職)。刑務所や少年鑑別所で犯罪者を心理分析。
・出口保行先生インタビューシリーズはコチラ
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2024.10.02 20:00心霊高学歴のリア充人間でも犯罪を犯す理由とは? 1万人以上の犯罪者を心理分析した出口保行インタビューのページです。白神じゅりこ、出口保行、犯罪心理学、高学歴などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで