“1票の格差”の現実! 参院選“29万票”も獲得して落選した山田太郎議員が語る、児童ポルノ・検閲・FBI…表現の自由との戦い

1票の格差の現実! 参院選29万票も獲得して落選した山田太郎議員が語る、児童ポルノ・検閲・FBI…表現の自由との戦いの画像3写真(横) 「さんちゃんねる」(ニコ生)を放送する山田議員(14年6月撮影)

――議員の任期中に力を入れた政策はなんだったのでしょう? やはり、名前を知られたという意味では、“表現の自由”でしょうか?

山田氏 比例復活から3年半だったわけですが、時間だけで考えれば、農林水産委員に対して質疑してきた期間が長いですね。これは、農業改革、農協問題、国有林の問題で、針葉樹の森から広葉樹の森へ戻せ、という活動です。国有林の事業の失敗が花粉症を呼んだと言われていますからね

 でも、密度の問題でいえば、予算委員会です。ここで、半分以上は表現の問題を取り上げました。児童ポルノ改正問題や、TPPの著作権問題など、予算委は主戦場でした。総理がいる。総理が答弁すれば、法律と同じような効力を持つ。総理への質疑は、官僚にも大きく作用するんです。実は、(官僚との)レクの中で解決した問題もあります。質疑はしなくても、議員室で解決する場合があるんですね。

 よく「こんな答弁を言っていたよ」とか言われますけど、基本的に答弁は決まったことをさせるだけ。大事なのはその1カ月2カ月前の準備段階。こっちが納得しない答弁なら、質疑をしないし、答弁させない。だって、違うことを答弁しちゃうから。整えていたのに違う答弁をしたのは高市さんだけ。だから高市さんは許さない(笑)。

 それは郵便法の信書問題(15年1月、クロネコヤマトは、ヤマト運輸のクロネコメール便を廃止した)ですね。郵便だけが信書を運べる(*)。となると、ビジネス宅急便には信書は入れられない。実は、取り調べを受けたユーザーがいるんです(**)。「ゆうパックの中に手紙を入れられるのか?」と質問をしたら、「ケースバイケース。信書にあたらない場合もある」と言われてしまった。総務署の官僚の間では「信書」ということになったが、大臣が勝手に変えたんですよね。

*郵便法では、手紙を宅急便に入れて送ると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金になる
**ヤマト運輸の調べで、過去5年間で8件、警察による操作が行われた。事情聴取と書類送検は3件。いずれも不起訴(15年3月、参院予算委での、山田議員の質問による)

 そして、一番議論に時間がかかったのが「メールは通信の秘密にあたるのか?」という点です。メールって憲法を作ったときにはなくて、当時は郵便だけでしたから議論されるんですよ。議員室での言い争いも多かったですね。時代が変わって、我々が侵されたくないのはメールとか電子媒体になりましたので、それが入るかどうかは大きな問題でした。内閣府法制局としては「メールは通信だね」となっていましたが、それを岩城法務大臣に聞いたんです。問題は、刑訴法111条の解釈でした。「処分」の中で、令状なしでメールを開けることができるのか? ということですね。結局、「できない」ってことになりましたよ(*)

*以下は、16年3月参院予算委でのやりとり

山田議員 今アップルはFBIに対して抵抗しています。開けたくない、これがいわゆる利用者に対する信義だと、こう言っているわけでありますが。

岩城光英法務大臣 外部業者に協力を求めることはできると考えられると先ほど申し上げました。その上で、外部業者が協力を拒否した場合には、法律上、外部業者に協力を義務付ける規定はないものと承知をしております。

山田氏 これは時間がかかったね。「捜査に支障をきたすから勘弁してくれ」「質問に深みがない」などと言われたりもしましたが、ここで引き出していたものは大きいと思っています。

―― 一般の人に山田議員の名前が伝わったのは、児童ポルノ法改正問題で、「ドカベンの山田太郎と同じ名前」で、妹のさちこの入浴シーンが規制対象になるのか?と質問したときですかね?

山田氏 いや。手応えとしては、(消費税の軽減税率にからんで)有害図書指定ですね。反響が大きかった。その直後に、「表現の自由を守る党」を作ったから2カ月で2万人が登録しまして、それは大きかったです。予算委員会で安倍総理から「検閲をさせない」という答弁を引き出したりしましたからね(*)。

*以下は、16年1月、参院予算委のやりとり

山田議員 出版前にもし政府機関が書籍の内容を確認して有害図書を指定すると、政府機関における今度は事前の検閲ということにもなる可能性があると思いますが、こういうことは絶対あってはならないと思います。これは総理、大事な問題なのでお答えいただけないですか。

安倍総理 そもそも、これ、検閲はできないわけでございますから、それは全くもちろん考えておりません。

――こうしたことが選挙に影響があった?

山田氏 うーん、もし最後の1週間で、ネットで広がらなかったら10万票も入ったかどうかはわからないですね。「さんちゃんねる」も本当の初期は10人しかアクセスがなくて、そのうち300人に。それでも300人しか見てなかったのが、最後の1週間で3000人~多いときは5000人になりましたから。「さんちゃんねる」の調査では、「自民でも民進でも票を入れていた」と言っていた人もいたので、もし離党してそこに入っていれば通っていたかもしれませんね。もちろん、「改革だから嫌だ」「通りそうにないから嫌だ」という人もいたんですが。

――今後の政治活動は?

山田氏 なんともわからない。でも、29万票の影響は大きくて、いろんな人が声をかけてきているので、もうちょっと様子をみようかな。10万票以下なら政界を引退しようと思っていたけど、29万票を取った責任があるので、これで「さよなら」はできませんね。「表現の自由を守る党」を政治団体として残そうと思っています。

 「続けてくれ」という手紙もきています。みんな、切実なんです。仮に次に(参院選を)やるとして、3年後は遠いので、「表現の自由を守る消費者団体」をつくるなど、なにかやらねばと思っています。今までは立法という観点から「青健法(青少年健全育成推進法案 *)」と戦ってきた。

*民主党政権時代に作られた「子ども・若者育成支援推進法」の一部改正案として提出。法律名や理念が変更されるもの。麻生政権時代に「青少年総合対策推進法案」が出てきたが、民主党との修正協議が行われた。日本国憲法と児童の権利に関する条約にも触れてた理念になっていた。しかし、それが削除されることになる。それがアニメ、漫画、ゲーム規制につながるおそれがある。

山田氏 文化にも、カルチャー、サブカルチャー、ニューカルチャーがある。スマホが出てきてからの、30代前半以降の世代とそれ以前の世代とは、隔絶感に強い。これまでのように、お金を使っている先が、<車を買って、家族を持ち、家を買い….>というものではなくなり、消費のウェイトが従来とはまったく変化してきている。良い悪いは置いておいて、これを正しく伝えないといけないと思っています。


――「オタク党」擁立の可能性に言及していた人もいました。

山田氏 これには2つ勘違いがありますね。ネット選挙っていうのは、Why(目的)、What(中身)、How(手段)が揃っていないとダメです。でもみんな、Howばかり。ネットだと手っ取り早く伝わると思っています。でも、ネットはインタラクティブな性質を持っていて、受け手の感受性が高くないとだめなんでも。たくさんの人に拡散するためには、インフルエンサーが必ず必要なんです。ちゃんと取材する人だったり、まとめる人だったり…。それがわかっていないとダメですね。

 また、何に対して何なのか? という強烈な目的が必要なんです。単なるオタクの代表では意味がない。オタクも所属する層の問題の代弁者として政策化し、解決しようとしていることが揃わないとダメなんです。今回は「コミケがやばい」とか、「青健法が危ない」とか。そして、結果として趣味人が影響を受けるんです。

 もうひとつ大事なことがあります。「ネットには、ネットの神様がいる」んです。その神様に嫌われないために、3つのことを守らないといけません。

 まず第一に、誠実であること。嘘をついてはいけない。消してもいけない。変えてもいけない。魚拓を取っているから、嘘はバレるんです。自分が間違えたときは、ごめんなさいすればいいし、勉強すればいい。嘘をついたらみんな調べる。「さんちゃんねる」でもそうだけど、自分もネットの前では「すべてを知っているわけではない」と、一緒に考える姿勢が必要だと思っています。

 二つ目は、自分が主人公だと思ってしまうとダメということ。自分は話題のきっかけを与えるだけ。インフルエンサー、ネットの住民が一緒に話題に乗っかれるようにすること。最初に石を投じることはあるかもしれないけど、自分が発信源ではないし、自分の影響力はそんなにないと思っていたほうがいい。厳しいですよ。一回投げたら、返ってくるけど、主ではない。あくまでも従なんです。

 三つ目は、ねばりですね。2年は認めてくれないと、「さんちゃん」やってそう思いました。あきらめかけたこともありましたが、粘ると自分も変化していきます。内容も変わるし、何がウケるかがわかってくる。今は3000人ぐらいが見てくれているし、この前も、放送スタート前に100人は待ってくれていましたから。「山田さんはネットを味方にした」と言われていますが、ネットを使っていた政治家は山のようにいて、みんな散っていったわけです。それをみんなわかっていない。お金をかければいいわけではないんです。だって、金かけてネット人気が得られるなら、自民党なんかいくらかけたの?って話です。みんな本音では「ネットでは票にならない」と思っているんですよ。

 僕は約束を守っているだけです。「さんちゃんねる」を毎週続ける、と。合計で、250回放送しました。

――次の活動予定はどうなのでしょうか?

山田氏 必要とされればやりますが、職業政治家じゃないからなあ……。みんな落選してもまた出馬したりするんだけど、僕はあまり執着がないから……。ただ感じているのは、29万票の重みと、初めてニューカルチャーが動いたっていうことの驚きと感動。それをもってして自分はどう考え、何を約束をするか、きちんと答えを出す責務がありますね。  

――当面は何をするのでしょうか。

山田氏 2010年に落選した時はただちに会社を立ち上げて、アジアに出かけて行ったから、今回もすぐなにかやるかもしれません。マグロですから(笑)、泳いでいないと死んでしまうらしい。それに「活動を続けてほしい」という一般の人からの声があまりにも大きいんです。

 本当は、安保法制のときに、政治家をやめるかもしれないと覚悟したんですけどね。僕は安保法制には反対派だったから、賛成したくない気持ちがあったからね。でも、現実路線として、歯どめの議論が出てきたから、それに乗ったんです。でもこれで少しは安倍政権の足かせになって傷跡は残したわけですから、これでやめてもいいと思いました。でも、青健法が心残りだったんです。内閣委員会の理事会に請願が出たときは度肝を抜かれたけど、あの時、僕が理事でいなかったら通ってましたよ。秋からはまた、議論が進むんじゃないかな。

 安倍さんも「表現の自由は大切」と言っていますが、今後、「表現の自由」に関する問題についてどの議員が真剣に取り組んでくれるのかはわからない。そして、どれだけやってくれるのかも。だから、まずは自分でやらないと。「表現の自由を守る党」でインタラクティブに連絡が取れる。今後の去就も、掲示板で意見を求めている。あとは、コミケでは街宣しようと思っている。報告を兼ねて。
(取材=渋井哲也)

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