眼球が平らになる!? 宇宙飛行士の80%が襲われる深刻な目の異変「VIIP」の謎とは?
■頭蓋内に機器を埋め込むべきか
そして最も大きな問題は、「視覚障害脳圧症候群」の原因が確定されていないことだろう。この症状が頭蓋内圧の高まりによって引き起こされるのか、または無重力が圧力の上昇を引き起こしているのかは科学者たちもはっきりとした答えを持っていない。
無重力を約25秒間実現するパラボリック・フライト(放物飛行)における頭蓋内圧の研究も行われているが、上昇中に頭蓋内圧は上がり、無重力状態になると頭蓋内圧は下がった。それは科学者たちが期待していた結果とは正反対のものだ。
宇宙飛行士でありNASAの人類研究プログラム元責任者のミハエル・バラット医師もまた、2009年に6カ月の任務で宇宙ステーションに滞在した時、「視覚障害脳圧症候群 (VIIP)」に苦しんだ1人だ。彼は、たとえ人体に機器を埋め込む処置を行わなければならなくても、頭蓋内圧を測ることがこの問題の解決には絶対必要だと考えている。その方法のひとつは被験者の任務中、いろいろな時点で頭蓋内の圧力を監視できる機器を頭に埋め込むことである。
バラット医師はまた、この視覚障害症候群は、微小重力下における生活によって人体にもたらされる数多くの危険のひとつでしかないと付け加える。そしてこれは単に眼科的な視覚と神経系の問題ではなく、もっと幅広い深刻な問題だと確信していると語った。
10年以内には一般人が参加できる「民間宇宙飛行」が実現され、海外に行くように宇宙旅行に出かける人も出てくるだろう。しかし宇宙にはまだまだ未知の分野が多い。特に人体に及ぼす影響に関しては、もっと知識を深めてから宇宙旅行への参加を決めたほうが賢明といえる。
(文=三橋ココ)
参考:「Oddity Central」、ほか
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