タトゥー、大麻、頭蓋骨に穴を開ける身体改造などを追う危険な旅/ケロッピー前田インタビュー

タトゥー、大麻、頭蓋骨に穴を開ける身体改造などを追う危険な旅/ケロッピー前田インタビューの画像6※ケロッピー前田氏(撮影・福田光睦)


■「トリップして、自分から何かをひきだしてほしい」

――この本を読む読者にメッセージはありますか。

前田 この本は、単なる物理的な移動の旅の本ではなく、内面の変化・経験を感じる本だと思います。“カルチャーが生まれる現場に立ち会え!”というのは、スゴい遠くや最果ての地だけでなく、日本国内のアンダーグラウンドパーティーでもいいのかもしれません。だから読んだ人には、自分のトリップを探してほしいです。情報を過剰に詰め込んだのは、いろいろなものに触れて、読者の人もなにかを自分から引き出してほしいからです。

――特に読者にオススメしたい章は?

タトゥー、大麻、頭蓋骨に穴を開ける身体改造などを追う危険な旅/ケロッピー前田インタビューの画像7画像は、縄文タトゥー(大島托×ケロッピー前田によるアートプロジェクト)『クレイジートリップ』より

前田 この本の特徴として強調したいのは、最後のルーツの章、北海道と縄文タトゥーの旅です。日本にいても遺跡に行けば、出土品と遺跡をセットで観賞できるんです。上野の博物館で見るのとは全然違う感覚で、“時空の旅”を味わえると思います。

――旅とカウンターカルチャーが本書を貫くキーワードですね。

前田 この本で紹介している先住民族や縄文というのは、21世紀においては僕らの日常生活に対するカウンターカルチャーになっています。もっといえば、縄文時代は1万年前に日本に住んでいた人たちが豊かな文化を育んでいたということが僕らの現代のカルチャーに対するカウンターになりえます。“モダンプリミティブズ”という言葉があります。90年代にボディ・モディフィケーション、いわゆるタトゥーやピアスが流行するキッカケになったときのキーワードです。その言葉は「人間は太古の昔から身体を改造してきたし、そのような改造行為は人類の根源的な願望なんじゃないか」という考え方です。それが、インターネットやハッカー文化が発達した同時期に世界的に広がって、タトゥーや身体改造のブームを生み出したんです。

 “サイバーパンク”という言葉も似たニュアンスを持っていますね。21世紀になり、サイバーパンク的世界は、僕らのリアルな日常になっている。だからこそ、縄文時代のタトゥーを現代人の身体に復興することは、日本における、モダンプリミティブズの実践であると僕は考えています。
 
――なるほど。最後に前田さんにとって、旅とはなんでしょうか?

前田 北海道の旅で、北海道考古学学会長の大島直行先生が縄文人の世界を説明するときに“不死と再生を願うシンボリズム”について語っています。これは縄文人は再生のシンボルとしての“蛇”を縄文という文様に托し、あらゆる遺跡や祭祀具においても、“蛇”ばかりか“月”や“子宮”や“水”といったものに同様のシンボリズムを探し求めていたであろうという大島先生独自のものです。たとえば、大島先生は、巨大集落といわれる三内丸山遺跡について、それは単なる集落ではなく、不死と再生を願う縄文人が全国から集まってくる聖地のような場所ではなかったと言っています。つまり、縄文人は狩猟採集をしながら定住せず、人生を通じて聖地を訪れる旅をしていたというのです。

 僕にとって、そのような縄文の旅は、まさに『クレイジートリップ』だと思うんですよ。「人は旅を通して、新たな人と出会い、カルチャーを生み、歴史を作ってきた」という旅であったというわけです。

 だから、本書を手にとってくれた人たちも気晴らしにどこかに旅行するというだけでなく、旅を通じて成長したり、何かに気付いたり、自分を再確認したりして、より良い人生をみつけられたらといいなと思います。そういう考えは『バースト』のころからも一貫したことで、あとがきにも「人間として生まれて良かったと思える旅」としてまとめています。そんな新たな旅への衝動をみなさんの中に引き起こすことができれば嬉しいですね。

■出版記念イベント
発売記念!最狂旅本『クレイジートリップ』取扱説明会!
9/5(月)@ネイキッドロフト START 19:30
出演:ケロッピー前田、担当編集YS(三才ブックス) ゲスト:草下シンヤ(海外危険地帯潜入ライター)、キュンチョメ(気鋭の現代アートユニット)、大島托(タトゥーアーティスト)、川崎美穂(TATTOO BURST元編集長)司会:福田光睦(モダンフリークス)
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/naked/48284

■BUBKA presents 『オキュパイ・スクール 2016夏バージョン』@白夜BSホール
2016年8月27日(土)18:00~
講師:末井昭、渡辺篤、釣崎清隆、石丸元章、花房太一、有賀慎吾、じゃぽにか、角由紀子、ケロッピー前田
http://keroppymaeda.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/8272016-44f9.html

■写真展
TAKU OSHIMA × KEROPPY MAEDA
『JOMON TRIBE 縄文族』@阿佐ヶ谷TAVギャラリー
2016年9月16日(金)~9月27日(火)
http://tavgallery.com/

 
■ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)

タトゥー、大麻、頭蓋骨に穴を開ける身体改造などを追う危険な旅/ケロッピー前田インタビューの画像8

1965年、東京生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書『今を生き抜くための70年代オカルト』 (光文社新書) が話題に。
公式twitter:@keroppymaeda


■松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。
・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/

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