即身仏(ミイラ仏)が服を脱いで寺を徘徊する瞬間映像? 高徳の僧が世界平和を訴えるために復活した!?=ロシア

■即身仏が動くことはあり得るのか?

 現在のロシア連邦ブリヤート共和国で1852年に生まれたダシ=ドルジョ・イチゲロフ上人は、当時のロシア帝国領内でも最高の仏教指導者として君臨した人物で、1913年にはロマノフ王朝300年記念祝賀会に出席、ヨーロッパ初となる仏教寺院、グンゼチョイネイ・ダツァンをサンクトペテルブルクに建立した。チベット医学にも精通していたため、第一次世界大戦が開始されると「ブリヤート兄弟社」を設立し、傷病兵の看護や治療、救恤金を供出するなどしてロシア軍を支援、その功績によって聖アンナ勲章を授与されたこともあるそうだ。ロシア革命後も同地に残り、1927年6月に入滅。その後1955年に遺言に従い、遺体が掘り起こされ、即身仏としてイヴォルギンスキー・ダツァン寺院に保管された。実は、以前トカナで報じた即身仏は、イチゲロフ上人のお師匠にあたる人だったそうだ。

 しかし、いくら高徳の僧侶とはいえ、ミイラになりながら動き出すことなどあるのだろうか? 仏教に詳しい方に聞いてみた。

「瞑想に熟練したチベット仏教僧は、自身の身体が活動を停止した後も“生きている”場合があります。チベット語では心のことをセムというのですが、これは我々が通常「心」と呼ぶものの範囲を大きく逸脱しています。(チベット)仏教では、通常の意識状態にあたる粗大な心から、通常は認識できない微細な心に至るまで、心に階層性を設けています。ですから、波が静った湖面のように粗大な心が動揺せず、表向き死んでいるように見えても、水面下では微細な心が生き生きと活動しているのだと彼らは考えるのです」

「瞑想修行に完璧に熟達した高僧は、自身の肉体的な死の際に“土台の光明”(トゥクタム)と呼ばれる特殊な状態を体験します。この状態を保ち続けることにより、呼吸や心臓や脳波が止まっても、瞑想の姿勢を維持し続けます。このことは科学的にも検証されていますが、現在の科学では説明できない“奇跡”とされています。トゥクタムの状態から抜け出し、歩き出したという話は聞いたことがありませんが、現代科学の常識を超えている以上、イチゲノフ上人のような例もあり得ないとは言えないでしょう」

 そう考えると、僧侶であるアユシェフ師やパルダノフ氏が、イチゲノフ上人が動き出したと考えるのも頷ける話だ。にわかには信じがたい話だが、これほど高徳の僧侶ならば、もしかしたら常識では考えられないような神通力を操ることができるのかもしれない……。もちろん最終的な判断は読者にお任せするが、我々が想像もできないような奇跡が仏教の伝統に根付いていることは確かだろう。
(編集部)


参考:「Siberian Times」、「YouTube」、ほか

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