NASAが第2の月「ミニ・ムーン(2016 HO3)」を発見! 謎すぎる軌道と地球に衝突の可能性は?
何か物事を世間に公にしようとする時に100年も様子を見るのはさすがに行き過ぎだろうが、こと悠久なる宇宙に関しては例外といえるようだ。
月は地球の唯一の衛星(惑星の周りを公転する天体)であるが、今年になり、直近100年の間に地球の軌道上に安定して現れ続けているひとつの小惑星「2016 HO3」が地球の新しい準衛星“ミニ・ムーン”としてNASAより正式に認定されたのである。
■新たに認定された“月”
もっとも2016 HO3は我々が親しんでいるオリジナルの月とはだいぶ様子が異なっており、NASAの科学者たちが明らかにしたところによると、直径はわずか40~100メートル程のゴツゴツした岩のような極小惑星である。
常に地球の近くにあって、地球と類似した軌道でゆっくりと太陽の周囲を公転しているが、地球との距離は1400万キロ(地球から月までの約38倍)以上。地球の周囲を回るように運動するが、力学的な運動中心は太陽であり、地球を中心とする本物の月とは本質的に異なるため、地球の衛星ではなく準衛星となっているという。
最初に発見されたのは今年4月27日、米・ハワイ大学の天文学者を中心とした研究チーム、パンスターズ計画の望遠鏡PS1による観測からだ。半年ごとに地球よりも太陽の近くへと先行した軌道を公転したり、逆に遠ざかって公転したりと独特な軌道パターンを持っているが、少なくとも後数百年間は準衛星として地球と共に太陽の周りを回り続けると推測されているという。
NASAのジェット推進研究所で地球近傍天体(地球に接近する軌道を持つ彗星・小惑星・流星体)部署を管轄しているポール・チョーダス氏は、地球と2016 HO3の距離の視点から「最もはっきりした地球近傍小惑星の例」だと語っている。
■地球と衝突する心配はない
前述の独特の軌道に加えて、軌道が地球の公転軌道に対してやや傾いているため1年に一度地球の軌道面に対して浮かび上がり、再び潜るという動きを繰り返すのだが、この間地球との距離は地球と月との距離の38~100倍の間で変動しており、地球と衝突する心配はないという。
実は長年にわたり、同様に地球を周回する小惑星は複数発見されていたのだが、2016 HO3と比較すると、いずれも一時的なものですぐに地球から遠ざかってしまうものがほとんどであった。
10年以上前には「2003 YN107」という直径20メートルの小惑星が発見されたが、らせんを描くようにして地球に密着していたのは7年間という短期間。再び地球に接近するのは半世紀後だそうだが、同じように準衛星に認定されなかった小惑星の中には「2002 AA29」の600年後というサイクルもあるそうだから、もはや生きている間にはどうにもこうにも確かめようがない。広大すぎる宇宙に流れる時の流れはただただ果てしないのである。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「inhabitat」、ほか
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