ビッグバン以前に何があったのかついに解明か? 科学者が唱える「サイクリック宇宙論」と「世界4フェイズ説」とは?

■宇宙には4つのフェイズがありそれを繰り返している

 宇宙にははじまりも終わりもない……というよりも、はじまりと終わりを何度も繰り返していると考えるのが「サイクリック宇宙論(cyclic universe theory)」である。ファイサル教授らも基本的にはこの立場に立っている。

 ファイサル教授によれば、宇宙には4つのフェイズ(様相)があり、その4つのフェイズを延々と繰り返しているということだ。もちろん今のこの宇宙はその4つのうちのひとつである。

 例えば水(液体)は、氷(個体)にもなるし水蒸気(気体)にもなることから3つのフェイズがあるといえる。宇宙はこれにもう1フェイズが加わって4フェイズの変化を繰り返しているということである。したがって、確かにビッグバンは起きているが、それは液体だった水が気体の水蒸気になることにも似たフェイズの移行だということだ。

「我々の宇宙論モデルでは、この宇宙はビッグバンからはじまってはいません。ビッグバンはこの宇宙のフェイズの移行なのです」(ミール・ファイサル教授)

 ビッグバン理論の場合、はじまりとなるビッグバンと宇宙の終焉であるビッグクランチという“特異点(singularity)”の概念を必要とするのだが、これらの現象は文字通り“特異”で異常な出来事であるため、物理法則が無用のものになってしまい、意味のある理論構築ができない。しかし、このファイサル教授の宇宙論モデル「修正一般性不確定性原理(modified GUP)」では、“特異点”の概念を必要とせずにこの宇宙の成り立ちを説明するものになるということだ。

 今のこの宇宙が、4つのフェイズのうちの1つであるとしたら、ほかの3つはどんな宇宙なのか興味深いものがある。しかし、氷と水蒸気以上に異なる世界であるとすれば、まったく想像がつかない。そして、いずれ今のこの世界はいったん幕を閉じ、別のフェイズに移行する時が来ることになる。はたしてその移行期がいつなのかということも大いに気になるのだが……。
(文=仲田しんじ)


参考:「Disclose.tv」、「EWAO」、ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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