ネアンデルタール人のDNAが我々の「身長と統合失調症」に関連か!? 遺伝子「ADAMTSL3」の最新研究が面白い!
現代に生きる我々ヒト(ホモ・サピエンス)の遺伝子発現において、はるか昔に生きたネアンデルタール人由来の遺伝子が関連しているとは、なんとも不思議な話である。
■ヒトのDNAの2~4%がネアンデルタール人由来
人類の進化は、猿人(アウストラロピテクス)→原人(ホモ・エレクトス)→旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)→新人(ホモ・サピエンス)であるが、過去数十年間の研究の進展によって、今日までの人類進化の学説は、ここに来て大きく変化している。
ホモ・サピエンスが旧人類を全滅させたため両者は交わらなかった、というのが従来の定説であったが、現在では解剖学的な共通点に加え遺伝学的研究からも、両者は地球上でかなりの期間を共有し交雑があったことが判明したのである。
最後のネアンデルタール人が死亡したとされるのは約4万年前だが、彼らの遺伝子は現生人類にも脈々と受け継がれているというのだ。アフリカから生まれて世界中に広がったホモ・サピエンスだが、専門家らによれば、今日の非アフリカ系の人々のDNAの2~4%がネアンデルタール人由来であるという。
実は以前よりネアンデルタール人の遺伝子が現代人の疾患に関係していることはわかっていたようだ。米ワシントン大学のジョシュア・エイキー氏は、5万年前に最初のネアンデルタール人との異種交配が行われたというモデルを提唱しており、近代人の遺伝子発現によるそれらの変化が疾患に影響を及ぼしていることに着目したひとりだ。
ただ、ネアンデルタール人のDNAは化石から抽出することが可能だが、細胞中でタンパク質合成部位であるリボソームにDNAの情報を伝える役割をするメッセンジャーRNAについては回収されていないため、遺伝子発現に影響を及ぼす調節多様性については長らく不明のままであった。
■ネアンデルタール人由来の統合失調症のリスクを減らす遺伝子「ADAMTSL3」
最新の研究ではRNA配列データセットに着目。対立遺伝子に特有の発現を定量化するプロジェクトを立ち上げて調査を開始し、ネアンデルタール人由来の遺伝子と現代人の遺伝子とがそれぞれ52の異なる組織においてどう発現しているのかを検証した。
その結果、両者間にはおよそ25%に違いが見られたといい、特にネアンデルタール人由来の脳と精巣に関わる対立遺伝子に下方制御がはっきり見てとれたという。これにより70万年前頃にネアンデルタール人とホモ・サピエンスの系統が分岐した後に、脳と精巣に急速な進化があった可能性があり、両系統の違いが生まれたのではないか、と研究チームのメンバーである前述のジョシュア・エイキー氏及び同大学のラジブ・マッコイ氏はコメントしている。
今回の研究で特に注目すべきは身長、そして狼瘡(皮膚結核)と統合失調症の遺伝に関わっていることが判明したことである。特に「ADAMTSL3」と呼ばれる遺伝子は統合失調症のリスクを減らし、身長に関して影響を及ぼすことが判明したが、タンパク質の急速な突然変異による化学修飾と身長、統合失調症の相互関係についてはさらに研究が必要だという。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの異種交配によってより複雑化している遺伝子だが、これだけ長い間を経ても我々現代人の体内に古代人の遺伝子が残り、なおかつ少なからぬ影響があるとは驚きだ。今後の研究では、ネアンデルタール人やホモ・サピエンスと共存していたとされる、未知の新系統の人類であるデニソワ人由来の遺伝子においても現生人類の遺伝子発現に関係があるかどうかが課題となっており、研究の進展が期待されている。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Daily Mail」、ほか
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