時間を飛び越える新物質「時間結晶」8つのミステリー! パラレルワールドとも関係か? 量子物理学者が徹底回答!
■時間結晶は日常でも起こっている?
3――時間の対象の破れは普遍的に起こることなのでしょうか? それとも偶発的に起こるものなのでしょうか?
X氏 時間の対称性の破れ自体は日常的に起きています。というか、物が運動しているということは、時間の対称性を破っていることだといえます。例えば物が動いているとき、時間経過により(あたりまえだけど)物の位置が変わります。それは時間に対して、その物体の分布の対称性が破れているということです。でもボールを床に転がしたときに、ボールは「転がる」という動きを永遠に続けるわけではなくて、摩擦や空気抵抗のせいでそのうち止まってしまいます。このような物体の状態は安定していないと言われます。時間結晶は、時間の対称性を(離散的にではあるけれども)破りながら、安定的に存在している物質の形態であることが画期的な部分なのです。
4――時間結晶は、実験中にしか起こらないものなのでしょうか? それとも日常的に起こっているのでしょうか?
X氏 いいえ、今回の時間結晶に関しては違います。今回使われたダイヤモンドのNV中心は、マイナス170度程度の極低温でしか量子力学的に振る舞いません。量子力学的に振る舞うことは、時間結晶を作る上で欠かせないものだと思います。さらに、観測にはごく微小な磁気を検出するための大がかりな観測装置が必要です。したがって、室温で我々の目に見える大きさのレベルで、つまり我々が知る日常の現象で、今回実験で作られたタイプの時間結晶が関わるものはないと思います。ただ、他のタイプの時間結晶の非存在が証明されているわけではないので、もしかしたら我々の日常の現象でも時間結晶になっているものはあるかもしれません。実際、今回時間結晶を作った研究チームはもっと外から熱が入ってくるような状況でも時間結晶を安定して存続させる実験を後に発表しています。もし日常レベルで時間結晶になっている物体を作ることができれば、外からの力に対してそれより早く、または遅く反応するという不思議な振る舞いをするはずです。それによって我々が日常に使うデバイスに時間結晶が入ってくる可能性もあるかもしれません。
※今年3月に筑波大学などが「時間結晶の室温観測」に成功し、量子コンピューティングや量子メモリの応用が期待されている。特殊な実験環境であったことに変わりはないが、やはり我々の日常でも時間結晶が起こりうる(すでに起こっている)のかもしれない。
■対称性の破れとは?
5――「時間結晶」は、時間の対象性が破れているように見えて、実は法則性があるというような、フラクタルな存在の可能性はありませんか? つまり宇宙スケールの物質である可能性です。
X氏 時間結晶はフラクタル宇宙論とは多分関係ないと思いますが、対称性が破れているように見えて秩序が保たれている、というのは対称性の破れの本質に関わるいい質問なので、また別の機会にご説明しましょう(「対象性が破れる時」は、近日公開予定!)。
6――「時間結晶」は、実は物質が動いているのではなくて、時間の流れが乱れている可能性はないのでしょうか?
X氏 相対論のように本当に時間の流れる早さが変わるわけではありませんが、「外からの力に応答する速度が違う」という不思議な物体であることは確かです。1秒周期で物体を揺すっているときに、その倍の2秒周期や、半分の早さの0.5秒周期で振動する物体のようなものです。応答時間が遅れた(早くなった)物質と言っても良いと思います。
7――「時間結晶」は実は、異次元の情報を取り入れている可能性はありますか?
X氏 対象性が破れているその時、その物質は、異次元空間の情報や環境(パラレルワールド)などに存在している可能性。これも「対称性が破れるとき」を読んでください。物体がその対称性を破るためには他の物体との接触が必要です。今回の時間結晶はさすがに異次元空間と接触していませんが、外部の電磁場と接触して対称性を破っているのです。時間結晶とは話はズレますが、初期宇宙においては、もしかしたら異次元空間や他の宇宙との接触があったのかもしれませんということも、次の機会にお話しするつもりです。
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2024.10.02 20:00心霊時間を飛び越える新物質「時間結晶」8つのミステリー! パラレルワールドとも関係か? 量子物理学者が徹底回答!のページです。物理学、量子論、時間、時間結晶などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで