神経科学者が断言「現実は幻覚、死を恐れる必要は皆無」! 生命の意識は広大な宇宙意識の一部、AIには宿らないもの

■「死を恐れる必要はまったくない」

 さて、我々は五感によって外界の情報を取り入れている一方、体の内側からくる感覚もまた重要であるとセス氏は説明している。いわゆる“内臓感覚(gut feeling)”や身体の内部から発せられる音なども意識に影響を及ぼしているということだ。

 そして、我々がそうした“生身”の存在であるということが、簡単には人間をAIで代替することができない根拠になっているということだ。

「意識を持ったAIが登場するのは、かなり遠い先のことだと思います。私の研究では、意識は純粋な知能とは関係がなく、生きて呼吸する生物としての私たち自身の性質、すなわち“生身”であることと最も深く関係しているのです。意識と知能は非常に異なるものです。あなたは賢明であろうとして気を煩わせる必要はありませんが、生き延びようとしなければなりません」(アニル・セス氏)

 そしてTED講演の最後を締めくくる言葉として、セス氏は3つの提言を述べている。

 1つは、私たちが世界のすべてを正確に捉えられないように、自分自身のことさえ正確にはわかっていないという事実を自覚することである。この自覚は、精神疾患系の症状を治療する際に鍵となる認識であるということだ。

 2つめは先のAIの話題ともつながるが、人間の意識はコンピュータにアップロードできるようなもの「ではない」ということだ。我々は“生身”の存在であり、AIやロボットがどんなに賢くなっても、人間に代わるものにはならないということである。

神経科学者が断言「現実は幻覚、死を恐れる必要は皆無」! 生命の意識は広大な宇宙意識の一部、AIには宿らないものの画像3 画像は「TED」より

 そして最後にはセス氏の宇宙観が語られ、「個々人の意識はこの広大な宇宙意識のわずかな一部分を占めているにすぎない」と解説している。人間以外の生物も、すべてが宇宙意識の構成要素となっているという。これは、宇宙と個人の意識のどちらが主従ということもなく、あくまでも宇宙の構成要素であり、その意味で死を恐れる必要はまったくないと力説している。たとえ生物学的な死が訪れようと、すでに我々は宇宙の一部分であることに変わりはないからだ。

 認知の問題から意識の問題、そして宇宙論まで、よどみなく解説するセス氏のスピーチは多くの聴衆の心をつかんだようだ。今回のセス氏のスピーチ以外にも、知的刺激を受けるTEDトークはたくさん公開されている。日本語字幕があるものも少なくないので、時折TEDのアーカイブを眺めてみれば意外な発見がありそうだ。

参考:「Collective Evolution」、ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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