豪大学が自然界に存在しない「二次元物質」を作り出すことに成功! “キッチンでも作成可能”で科学技術に劇的進歩
ほとんど厚みがない「二次元物質」が誕生し、大きな注目を集めている。報告によると、それはなんと“原子レベル”という途方もなく薄い物質だというが、科学技術分野や私たちの暮らしに革命的変化をもたらす可能性を秘めているようだ。詳細についてお伝えしよう。
■厚さは原子数個分(!)の「二次元物質」作成に成功
おめでたい席でふるまわれる日本酒には金箔入りのものがあるが、これに使われている金箔はきわめて薄く、厚さは0.1~0.2ミクロンといわれている。もはやほとんど“二次元”と呼んでも差し支えないレベル――かと思いきや、最先端の科学では、金箔をはるかに上回る「二次元物質」が作られている。10月20日、学術誌「Science」(オンライン版)に掲載された最新研究報告によると、オーストラリア・RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)の研究チームが、液体金属からわずか原子数個分の厚みしかない酸化被膜の作成に成功したという。
酸化被膜とは、一種の金属の“サビ”なのだが、研究チームは液体金属を溶解して、極めて薄い酸化皮膜を生み出した。酸化ガリウムよりも薄いこのような物質は、自然界には存在せず、かつ容易に剥がれるという特性を持っているようだ。そして、これは化学分野において“10年に1度”レベルの偉業であることが主張されている。
「我々は、毒性のない酸化ガリウム合金(アルミニウムに類似した金属)を反応媒体として使用し、液体金属の表面を覆う原子レベルの薄さの酸化皮膜層を生成しました」と研究チームは胸を張る。人類が今まで見たこともなかった“新しい物質”の誕生だ。
この二次元物質(酸化皮膜層)は、液体金属に空気を注入することで簡単に作成できるため、それなりの設備があれば大量生産も可能であるということだ。原材料とシンプルな専用の器具さえあれば、キッチンのオーブンでも作成できるというから驚かされる。では、いったい二次元物質が私たちにどんな変化をもたらしてくれるのか?
■「エネルギー効率の高いエレクトロニクスが実現」
二次元物質は、将来の技術分野に大きな影響をもたらすという。半導体や誘電体の素材になるからだ。
「半導体および誘電体のコンポーネントは、今日の電子および光学デバイスの基礎です。この原子数個分の薄さの部品を用いることで、より優れた、よりエネルギー効率の高いエレクトロニクスの実現が期待できます」(研究論文より)
現代の多くの電子機器に使われているトランジスタの構成部品として二次元物質を使用することができるというわけだが、酸化皮膜層が薄いほど処理速度は速くなり、省力化する。つまり、これまでよりもさらに扱いやすくバッテリーが大幅に長持ちするスマホやタブレット、ノートPCなどが登場する日も近いことになる。近未来における電子デバイスの進歩が楽しみになる話題といえるだろう。
参考:「EWAO」、「RMIT University」、ほか
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