生涯奴隷としてこき使われる女たちを描いた封印作品『驚異!女奴隷の国』が深すぎる!
父親は娘を嫁に出す際、「新しい家では男に逆らうな。呪いがかかるぞ。しっかり従うように」と送り出す。そして、たとえ夫が嫌で娘が帰ってきても、親は嫁ぎ先へ連れ戻す。また嫁が逃げると、夫の家の者は誰も子供に食事も与えない。だから、ほとんどの嫁は我慢しているのだ。また、ハマール族の女は再婚できない。もし夫が死んでも、その家にとどまり子供と家畜を育てなければならないのが掟だ。
女は夫より先に暗いうちから起床し、家畜牛の糞の清掃、徒歩で往復何時間もかかる遠い場所への水くみ、モロコシ畑での仕事をする。その間、男どもは何をしているかというと、男だけしか座ることのできない椅子に腰かけタバコをスパスパ。ゲームや占いに興じ、男同士で化粧をし合い、髪型を丹念に整え、素っ裸になって全身を泥パックする(乾くと真っ白になるのがオシャレ)と美容に余念がない。女は普段は地味な格好をし、収穫祭の時のみ着飾ることを許されるのだ。
だが、男たちは男たちで怠惰な生活に自信喪失している自覚もある。牛を追い、どこで手に入れたのか、丁寧に手入れしているライフルでシカやダチョウを狩る。男たちはその場で腹を切り開き、内臓にたまった血に口を付けてジュルジュルすする。ダチョウのぶっとい足の骨は空洞から骨髄をかき出して飲み、羽根は男たちにとっては美しい装飾品になる至高の逸品だ。まあ、これは仕事というより、退屈しのぎのレジャーなのかもしれないが。
ラスト近く、女たちにとって過酷なビジュアルを具体的に見せつけられる。ハマール族では「歯の丈夫な女は肉をよく食う」と嫌われる。だから気丈な女は、自分の意志で人に歯を抜いてもらう。カメラは、12、3歳くらいの少女の抜歯シーンを、最初から最後までノーカットで映し出す。男がヘラのような刃物で、麻酔をかけずに少女の下の前歯を2本、強引にえぐり取る。我慢している少女の精神力は見上げたもので、母親から「いい女の仲間入りだ」とメチャメチャ誉められ、口から血を流しながら満面の笑みを浮かべる。
最後に、語り部の女性が締めくくる。「ハマール族の女は、男に鞭打たれるために生まれてくるのです。我々の先祖も母親も、みんなこの習慣を背負って生きてきました。でも、ずっと我慢していれば、そのうち諦めに変わり、楽になっていくものなのです」。
タイトルから連想するような猟奇的なシーンもヤラセもなく、男性上位社会で過酷に生きる女性たちを、至極リアルなタッチで記録した地味なドキュメンタリーに過ぎない。劇中にこんなシーンがある。乾いた大地に恵みのスコールが降ると川ができるが、止むと水はすぐに砂地に染み込む。これを掘って、地下に染み込んだ水を懸命に集める女たち。実はこの作品の原題は『RIVERS OF SAND』。監督のロバート・ガードナーは、1986年にインドのベナレスで行われる葬礼を記録した問題作『至福の森』(Forest of Bliss)で賛否両論を巻き起こすなど、アメリカを代表する民族誌映画作家。この内容ならナショナル・ジオグラフィックやディスカバリー・チャンネルなどで放送できるレベルだ。学術的な記録映画にキャッチャーな邦題を付けてモンド映画に見せかける。これも商魂のなせる業なのである。
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