なぜ川崎はここまで“エグい土地”になったのか? 貧困、差別、売春、殺人、ヤクザ、ドラッグ… BAD HOPら不良少年の証言を収集した『ルポ 川崎』著者インタビュー
■川崎のヤバさを内面化する不良たち
――取材と連載はどういう風に進みましたか?
磯部 「月刊サイゾー」という雑誌の性格上、編集部からは生々しくてエグい話を期待されますし、こちらもそういう側面に興味があるのも確かなんですけど、ただ、『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』(駒草出版)で川崎がフィーチャーされたり、ネット上にも川崎に関する悪い話はいくらでも転がっています。取材をし始めた当初も大人たちから「またその(悪意ある)捉え方か」という反応があった一方で、不良少年たちはエグいエピソードを自慢げに話すんですよ。「川崎は危ない土地だ」という外の人間から押し付けられたスティグマ(負の烙印)を勲章のように思っているというか、それこそが自らのアイデンティティーになっていたりするんです。そういった複雑な状況にあるということを念頭に書き始めました。
取材開始時19歳だったBAD HOPのメンバーたちにも、そういった側面があったんですけど、ただ、彼らは「ラップで有名になることでしがらみから抜け出したい」「川崎の不良でもこうなれるんだと、地元の子供たちに夢を与えたい」と考えていました。その後、ヘイトデモに対抗する団体「C.R.A.C 川崎」や、川崎に暮らす在日外国人たちのよりどころとなる「ふれあい館」の鈴木健さんと取材が続きました。彼らも街を変えようとしているわけです。
だから、川崎のとてつもなくエグい状況と、それをどうにかして変えるための行動、という二つの観点からの話を聞くことになりました。そうなったのが連載3、4回目あたりです。そこからは、単純に「川崎はヤバい土地だ」とレポするのではなく「なぜ川崎はそうなってしまい、どう変わっていくのか」を伝える方向性が定まりました。
――特に印象に残った取材は?
磯部 取材は毎回濃くて、どれも印象に残っています。今思い出したのは、浜町の不良たちの取材です。詳しくは本書にありますが、彼らの「ヤクザの指詰めを手伝った」という話――。すごく楽しそうにイキイキと話すから、聞く側としても鮮明に記憶に残ったし、そのまま書くだけでしっかりしたエピソードになりましたね。
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