なぜ川崎はここまで“エグい土地”になったのか? 貧困、差別、売春、殺人、ヤクザ、ドラッグ… BAD HOPら不良少年の証言を収集した『ルポ 川崎』著者インタビュー
■不良たちのリアルで特殊な距離感
――本書には、ハスリングラップ(※)を初めて日本に取り入れたとされるSCARSのA-THUGも取り上げられていますね。
磯部 SCARSというグループは元々ハスリングチームから発展したと彼は語っています。連載を始めたときは、A-THUGは刑務所に入っていて、取材をさせて欲しいと手紙を送りました。そして、出所後の復活ライブを取材、恐らく初となるロング・インタヴューもやらせてもらえて貴重な文章になったと思います。彼は00年代の日本のラップ・ミュージックにおける重要なアーティストですが、取材記事はほとんどないですからね。
2018年1月14日には川崎駅前のライヴ・ハウス<セルビアン・ナイト>で、BAD HOPや、LIL MAN、君島かれんちゃん、そして、A-THUGなど、本書で取り上げたひとたち揃って出演するイベントが行われる予定です。それはすごそうですね。
――僕や読者の人は、取材対象を怖い人たちだと思い込んでいますが、実際の取材ではどんな態度でしたか?
磯部 BAD HOPのメンバーたち、みんなめちゃめちゃ礼儀正しいですよ。基本的に敬語は崩さない。ただ、それも身を守る“防御手段”のひとつのようですけどね。本書でメンバーのYZERRはこう言っています。「オレら、初対面のときは、明らかな年下にも敬語を使うんです。それは礼儀正しい人間でいたいっていうのもあるし――これは『ギャングキング』(柳内大樹作)のセリフですけど――『最悪なイメージができてる奴』でいたいんで」。そんなところからも、彼らが生きてきた環境の過酷さが伝わってきます。
基本的に取材で「なんだテメエ!」みたいになることは一度もなかったです。ただ、礼儀正しく接してもらえるけど目が笑ってないときはありましたけど。僕より年上の不良でも敬語しか使わない人もいて、それはそれで近づき難いし、怖かったです……。
このように、かなり緊張感の高い取材もあったという『ルポ 川崎』執筆過程。次回は、取材のエピソードだけではなく、磯部氏が恐ろしいと思った「中1殺害事件への無関心さ」や「混血化が進む日本の未来」など、川崎から見えてきた日本の未来について語っていただく。
※ ドラッグの売買など非合法な仕事に従事した経験を持つハスラーによるラップ。
★インタビュー後編はコチラ!(12月21日16:00配信予定)★
磯部涼(いそべ・りょう)
1978年、千葉県生まれ。音楽ライター。主にマイナー音楽やそれらと社会の関わりについて執筆。著書に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)、『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト)、共著に九龍ジョーとの『遊びつかれた朝に』(Pヴァイン)、大和田俊之、吉田雅史との『ラップは何を映しているのか』(毎日新聞出版)、編著に『踊ってはいけない国、日本』『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(共に河出書房新社)などがある。
公式Twitter https://twitter.com/isoberyo
松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。フリー編集者&ライター。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)。
ブログ「~世界一周~旅の柄」 http://tabinogara.blogspot.jp/
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