【反出生主義】ヤバすぎる哲学書『生まれてこないほうが良かった』が日本上陸! アンチナタリズムから哲学を楽しもう!(小島和男准教授)

【反出生主義】ヤバすぎる哲学書『生まれてこないほうが良かった』が日本上陸! アンチナタリズムから哲学を楽しもう!(小島和男准教授)の画像3撮影=編集部

――本書を読むことに限らず、一般の人が哲学に興味を持ったらどのように学んでいくのがいいんでしょうか。

小島 やっぱりある程度の時間が必要です。今の時代、大学の授業なんかでも「とにかく分かりやすく」っていうのが求められます。でも、本当に複雑で難しいことっていうのもあるじゃないですか。それを簡単に話すと、どこか間違ったことを言ってしまうことになります。やはり一から時間をかけて積み重ねていかなきゃいけないものはあると思います。そういうのを普通の人がやるのは大変かもしれないんですけど、それでも人生の意味とか死について考えるっていうのは誰にでも関係していることですから、それをしっかり勉強をすることにはモチベーションを持ちやすいですし充実感もあると思います。

 お薦めとしては「哲学カフェ」っていうイベントがあるんです。入り口にとてもいいと思います。一般の人が集まって、さまざまなテーマについて結構自由に話し合いをしていくんです。場合によってはみんなが自分の心情を吐露するぐらいで終わってしまうかもしれないんですけど、でもやっぱり他人の意見を聞くと、たとえ専門家じゃなくても「それはちょっと違うんじゃないかな」とか思ったりするじゃないですか。

 人生や死についてはもちろんですが、誰しも生活をしていて思うこと考えることはあるはずです。カントを知らない人がカントっぽいこと言っていたりしますし、そのような場では勉強をしていないから語れないということもありません。そうならないように配慮もされているはずです。結構面白いですよ。そういうのに触れて自分の考えを深めていったり、興味を満たしていったりするのが楽しいっていうことはあり得ます。難しい哲学の本は読まなくても、そういうところで哲学を楽しむことはできるんです。そしてそれに物足りなくなって、専門の勉強に足を突っ込んでくれれば、それ以上に嬉しいことはありません。

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哲学に限らず、学問は、難しければ難しいほど内容が詰まっていて面白いと私は経験上そう思っています。全部が全部という保証はありませんが。

 あと、宣伝みたいになっちゃいますけど、大学の1年生向けの哲学史とか哲学入門の講義って、本当に分かりやすく丁寧にやろうとしています。今は大学って一般の方にも開かれているんですね。「科目履修生」という制度なのですが、受験をせずにその大学の一つの科目だけを受けるのも簡単ですので、興味がありましたらぜひ足を運んでみて欲しいと思います。シラバスという講義の概要も大概ネットで見られますから。お仕事を退職されてから60代で大学に入学されて、哲学を学ばれるような方もいます。皆さんがもっと気軽に「難しいなぁ」と仲間同士愚痴りつつ、哲学を楽しんでくれるといいなあと思っています。

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◆小島和男
2004年学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得退学。同大学文学部哲学科助手を経て、2007年同大学哲学博士取得。学習院大学文学部哲学科准教授。著書『プラトンの描いたソクラテス』(晃洋書房)、共著『面白いほどよくわかるギリシャ哲学』(日本文芸社)など。古代ギリシア哲学、今は特にローマ帝政期にプラトンを研究していたいわゆる中期プラトン主義者のアプレイウスのプラトン解釈を研究している。同時に、ハイデッガーのプラトン解釈にも目を向け「プラトンを読むことが哲学をすることにどうつながるのか」という問いから、哲学の方法論やメタ倫理学などの分野にも関心を持ち、ベネターの翻訳も手掛けた。

◆ラリー遠田(らりーとおだ)
作家・ライター/お笑い評論家
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業(専攻は哲学)。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、 『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。


【『生まれてこないほうが良かった』のサポートページ】
https://sites.google.com/site/umakona2017/
こちらに最新の正誤表を載せ、また関連のイベントの開催をリンクとともにお知らせしております。


【イベント情報】

●『生まれてこない方がよかった』出版記念トークイベント
2018年3月10日(土)15:00-17:00
http://www.gaccoh.jp/?page_id=9764
京都出町柳のGACCOHにて戸谷洋志先生と対談形式のイベントを開催致します。上記Webページよりお申し込み下さい。

●学習院さくらアカデミー(学習院大学内の生涯学習センター)
2018年3月25日(日)13:00~14:30
訳者が語る特別講座 何故、生まれてこないほうが良かったのか?~90分でわかるベネター『生まれてこないほうが良かった』
http://g-sakura-academy.jp/course/detail/2018/A/045/
上記Webページよりお申し込み下さい。

●学習院大学哲学サークルPhilo LABOにて、ベネターに関する哲学対話(予定)
2018年4月7日(土)17:00~19:00
2018年4月14日(土)16:30~19:00
下記TwitterまたはFacebookにて詳細を掲載致します。
https://twitter.com/philo_labo
https://www.facebook.com/philolabo/

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●学習院大学文学会・学習院大学文学部哲学科共催シンポジウム
D・ベネター『生まれてこないほうが良かった』をめぐって

2018年4月21日(土)14:00~17:50 学習院大学西5号館201教室 入場無料・申込不要

登壇者
森岡正博(早稲田大学 人間科学部 教授)
佐藤岳詩(熊本大学大学院 人文科学研究部 准教授)
吉沢文武(工学院大学 教育推進機構 特任助教)
戸谷洋志(大阪大学大学院 医学系研究科 特任研究員)
小島和男(学習院大学 文学部 准教授)司会者・責任者

「生命の哲学」の提唱者である森岡先生、『メタ倫理学入門』の著者佐藤先生、人生の意味から宇宙倫理、動物倫理まで幅広く研究されている吉沢先生、ハンス・ヨナス研究の戸谷先生をお招きしてのシンポジウムです。賛否の分かれるベネターのアンチナタリズム(反出生主義)に関して先生方のお話を伺います。来場者からの質問も質問用紙にて受け付けお答え致します。皆さま、奮ってご参加下さい。

文=ラリー遠田

作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。

Twitter:@owawriter 書籍情報:https://owa-writer.com/

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