【地下鉄サリン23年】 オウムに潜入した筆者が「イニシエーション」修行を解説、なぜカルトに洗脳されるのか?
■鬼畜すぎるオウムの修行「イニシエーション」の実態
オウムでは、信者の洗脳のために、さまざまな方法が実践されたが、その1つに「キリストのイニシエーション」と呼ばれる修行法があった。これは、信者にLSDを混ぜた液体を飲ませ、LSDの覚醒作用によって安直な“神秘体験”をさせるものだ。警察の依頼によりオウム信者たちの洗脳を解いたことでも知られる認知科学者の苫米地英人氏によれば、LSDは「究極の洗脳薬」であり、トランス状態に陥れば誰しもが指示に100%従うようになるという。
また、「バルドーの悟りのイニシエーション」または「ナルコ」と呼ばれた洗脳手法は、信者を麻酔剤や鎮痛剤で半覚醒状態にさせ、催眠状態で死の恐怖を煽るとともに麻原の教えを刷り込むことで、犯罪さえ肯定する人間に変えてしまった。さらに、それを推し進めた「ニューナルコ」と呼ばれた修行法に至っては、電気ショックを与えて記憶を消失させるものだった。麻原が側近たちに命じて、ある弟子から教団にとって不都合な記憶を消す方法を考えさせた結果として生まれたものだったという。
その他の「イニシエーション」といえば「左道タントライニシエーション」があり、名目上は「若い女性を高い次元に導いてやる」ために必要な儀式とされたが、実態は麻原に強姦される行為に他ならなかった。もはや修行とは名ばかりの、単に教祖の性的欲求を満足させるためのものだったのだ。ちなみに、教団にはホーリーネーム「ダーキニー」と呼ばれる30人以上の女性信者の一団がいたが、これは実質的に麻原の愛人たちの呼称だった。教団内では独自解釈した「不邪淫(ふじゃいん)」の戒律によって、たとえ夫婦でも性行動は禁止されたが、「最終解脱者」の麻原だけは許され、ダーキニーによるハーレムが作られていたのだ。なお、「左道タントライニシエーション」で、処女でないことが判明した女性は、ダーキニーになれなかったという。
■忘れてはいけない! かつてオウムを持ち上げた文化人たち
このように、オウムはまさに“狂信的”としか喩えようのないカルト教団だったが、サリン事件以前は、麻原や教団幹部が積極的にテレビ出演するなど、マスコミでもてはやされていたという事実を忘れてはならない。3年前の記事で紹介したように、吉本隆明氏、栗本慎一郎氏、荒俣宏氏、島田裕巳氏、中沢新一氏らのように、麻原を絶賛・心酔していた文化人も少なくなかった。前述の苫米地氏によると、当時は官庁・警察・自衛隊などの公的組織の内部にも、オウム信者が少なからず存在したという。日本の社会全体に、そのように怪しいカルト宗教を容認する風潮があったのだ。また、海外に目を向ければ、麻原と会ったチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王や、インドの行者パイロット・ババ師のような聖人たちさえ騙されてしまったといえる。
筆者は10代から約50年にわたり精神世界・心霊・ヨガ・超常現象などの不思議な世界に強い関心をもち、研究活動を続けてきたが、幸いにもオウム真理教に洗脳されることはなかった。かつては広く雑誌でも麻原が“偉大なヨガの実践者”として扱われていたが、取り巻きに美人が多いなど、どこか胡散臭いものを感じていたことも一因であろう。
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