【地下鉄サリン23年】 オウムに潜入した筆者が「イニシエーション」修行を解説、なぜカルトに洗脳されるのか?
■オウムのアジトに潜入! 何が起きた?
前述のように筆者は、かつてオウム真理教のアジトに、そうとは知らず潜入した経験を持つ。単なる「ヨガ道場」だということで、とある人に連れて行かれたのだ。しかし、そこで待ち受けていたのはオウム幹部による勧誘だった。もちろん、「自分は犯罪者集団であるオウムなどに入信する意思は一切ない」と断ったが、その際に驚いたのは、アジトの雰囲気や幹部たちの態度に、狂信的な要素がまったく感じられなかったことだ。幹部に説得されている間、筆者は平静を努めていたが、頑固な態度で入信拒否を表明すると、これはもう無理だと思ったのか、あっさりと帰宅を許されたことも今になって考えれば意外だった。
また、信者たちが真剣に修行している姿を目の当たりにして、ある意味で感心を覚えた部分もあり、幹部の女性にそのことを伝えると、彼女は「そりゃ、カルマ(業)がかかってますからね!」と語気を強めて言った。おそらくは、彼女の本心から出た心の叫びだろう。しかし、もしも仮に「カルマの法則」があるとしても、犯罪者集団の下ではカルマの解消どころか新たな「カルマ」を増やしてしまうのではないかと思ったものだ。その幹部は、非常に真面目そうな人に見えたが、やはり麻原に洗脳された哀れな人々の1人だったと言わざるを得ない。
■カルト教団にハマる人、決して他人事では済まされない!
それにしても、当時なぜこれほど多くの人々がオウムに関心を持ったのだろうか? 筆者が思うに、カルト教団には“餌”があるからこそ信者たちが集まるのだろう。具体的に言えば、餌とは“超能力”や“金運”など信者たちの“自己利益”、即ち彼らのエゴを満足させるものに他ならない。そして、このような願望の根底にあるのは“ご利益信仰”だ。
そう考えてみると、カルトに引っかかる人々だけを責めるわけにもいかない。というのも、日本人の宗教心の根底にあるのは、多くの場合“ご利益信仰”なのだ。私たちが初詣で祈ることといえば「家内安全」「商売繁盛」など、自分や家族の利益ばかり。世界全体の平和を優先するような利他的な祈りをする人々は、ごく一部だ。そして、過去の日本における新興宗教を見ても、同様の餌を撒くことで信者を増やしていった。結局のところカルト宗教は、超能力などの餌で信者を釣る“ご利益信仰”であり、エゴの否定から始まる高次元的神秘思想とは決定的に異なるのだ。
さて現在、森友疑惑で日本中が安倍内閣の動向を注視する中、15日に元オウム死刑囚13人が東京拘置所から地方の拘置所へと移送された。これは、1カ所の拘置所では死刑執行できる人数が限られているため、地方に分散させて一斉に、または短期間に次々と執行することによって森友問題から一気に国民の関心を逸らすためではないかとの声も上がっている。もしも本当にそのような思惑があり、国民が想定通りの行動を見せるならば、これも政府による一種の洗脳行為ということになるかもしれない。どちらも、私たちにとって決して目を離してはいけない重大事であることだけは指摘しておきたい。
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