90歳の孤独なロッカーが見つめる「死」の変化とは? 最高に格好いい自由人を描いた映画『ラッキー』が素晴らしい!
90歳になっても独立独歩を貫き、孤高なロッカーを思わせるラッキーが「死」を目前にして、その現実をどう受け止めるのか。その問題は、一人の現代人が子供も妻も愛人もなく、自分だけのルールに従い一人暮らしを続けてきたとき、その死をどう迎えるのかということでもある。
それまでは魂はないと断固否定する現実主義者だったラッキーだが、死を意識したことから徐々に変化が見え始める。近隣住民ともかかわり、死する存在として動物を見出し、第二次大戦で日本と戦ったという同年代の男性とも会話を交わして新しい発見をする。
そして、ラッキーの口癖のように登場する言葉「ウンガッツ」が重要なキーワードして浮上してくる。その言葉は「ナッシング」とも言い換えられ、「無」と訳されているが、ラッキーにとって「人は死んだらどうなるか」についての回答は「ウンガッツ」なのだ。さらにその言葉の向こう側には、自由な生き方を貫いたものが到達する境地が垣間見えてくる。
映画全体に流れる胸に染みるハーモニカのメロディーは、ラッキーことハリー・ディーン・スタントンが吹いている。彼は最高に格好よく生きて、天国に昇ったのだ。ハリーよ、素晴らしい映画をありがとう。
【上映情報】
映画『ラッキー』
監督:ジョン・キャロル・リンチ
出演:ハリー・ディーン・スタントン、デヴィッド・リンチ、ロン・リビングストンほか
(2017/アメリカ/88分/英語/1:2.35/5.1ch/DCP)
配給・宣伝:アップリンク
2018年3月17日(土)より公開中。新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか
【公式HP】
・http://www.uplink.co.jp/lucky/
【映画概要】
銀行強盗もしない、飛行機から飛び降りもしない、人助けもしない。
「人生の終わり」にファンファーレは鳴り響かない ―
神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。いつものバーでブラッディ・マリアを飲み、馴染み客たちと過ごす。そんな毎日の中でふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされた彼は、「死」について考え始める。子供の頃怖かった暗闇、去っていった100歳の亀、“エサ”として売られるコオロギ ― 小さな町の、風変わりな人々との会話の中で、ラッキーは「それ」を悟っていく。
【ハリー・ディーン・スタントン】
1926年7月14日、ケンタッキー州生まれ。第二次世界大戦に出征、海軍に従軍して沖縄に上陸した。除隊後ケンタッキー大学でジャーナリズムを学んでいたものの、演劇サークルに参加し演技に開眼。『ララミー砦の反乱』(1956)で映画デビュー。1979年、リドリー・スコット監督の『エイリアン』で機関士のブレットを演じ、その名を知られるようになる。アレックス・コックス監督『レポマン』(1984)、ヴィム・ヴェンダース監督『パリ、テキサス』(1984)で人気を得て、『ワイルド・アット・ハート』(1990)、『ストレイト・ストーリー』(1999)『インランド・エンパイア』(2006)など多くのデヴィッド・リンチ監督作品に出演。2017年に放映された『ツイン・ピークス The Return』には『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)出演時と同じ役で登場した。2017年9月15日、ロサンゼルスの病院にて91歳で亡くなった。『ラッキー』が最後の主演作品となった。
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