ボディサスペンション最前線をケロッピー前田が解説! 吊る、縛る、全裸、貫通、民族、儀式…!

――なるほど、ファキール・ムサファーさんの写真も有名ですよね。よくわかりました!

ケロッピー「注目のパフォーマンス部門について報告していきましょう。地元ベルリンの2つのチームが最新のショーを披露しました。ひとつは、ギリシアのオルフェウス神話をフック貫通のオペラ歌手が熱唱した『サンタ・サングレ』。彼らは演劇的なボディサスペンションで人気を得ています。今回の演目は『オルフェウスとエウリュディケ』、天国に昇った愛妻エウリュディケを助かるためにオルフェウスは天空を訪れますが、そのシーンをボディサスペンションを用いた空中劇で表現します。巨体のオペラ歌手が歌いながら、その背中に貫通したフックにロープを連結し、男女2人のパフォーマーを引っ張り上げ、悲劇的なラストに感動が込み上げていきます」

santa_sangre_02.jpgサスペンションチーム、サンタ・サングレ Santa Sangre

――スケールが大きい感じがいいですね。オペラ歌手にもフックが刺さっているし!

ケロッピー「エンターテインメントとしてのサスペンションの最先端と言えます。生演奏で本格的なオペラを演じているのがポイントです。もうひとつのチームは『スーパーフライ・サスペンションクルー』、彼らは、毎年夏に『スーパーフライ・サマーキャンプ』で一般のサスペンション志願者を広く受け入れ、ベルリンのシーンをけん引してきました。その中心人物で、カリスマ的な支持を集めるチャンドラーは、上下、左右、およそ12メートルの立方体になっているステージを隅々まで使い、複雑に渡したロープで2人の女性を吊るし、中央にはロープで縛った女性を配し、『吊る』ことのテクニックを存分に披露していました」

superfly_02.jpg画像は、スーパーフライ・サスペンションクルー Superfly Suspension Crew

――欧米だとサスペンションのアーティストが緊縛もやっちゃうんですね。

ケロッピー「向こうだと、美的な縛りは『ロープアート』って呼ばれますね。チャンドラーに聞いたら、『吊る』ことのプロだから、フック貫通だけじゃなく、縛っても吊れるんだと豪語してました。ロープアートとサスペンションのミックスも欧米シーンのトレンドです」

――そして、フィナーレにステラークさんの登場です!

ケロッピー「最初にレクチャーがあって、そのあとにパフォーマンスが続きます。レクチャーでは。『心臓が止まっているのに生きている』というパフォーマンスに将来的には挑戦したいと言ってました。そのまま死んじゃうんじゃないかって心配になりますよ。今回のパフォーマンスは、『チェア(椅子に座ったポーズ)』で吊られた5人の男女、それぞれの呼吸音は特殊なマイクによって増幅され、約15分間吊られている間に、乱れていたはずの5つの呼吸は徐々にシンクロして瞑想的な状態に入っていくというものでした。呼吸音を増幅して使用したことについて、ステラークは『サスペンションによって、吊られている人の内面に何が起こっているか、呼吸音を通じて伝えたかった』と説明してました」

Stelarc_&-Haフ02.jpgステラーク&オーウェ・フィエル Stelarc & Håvve Fjell

――心が洗われる感じがします。生で観てみたかったですね!

ケロッピー「今年、ノルウェーのPSメディアから、ステラークのサスペンションの全記録が一冊の本として刊行されます。確かにボディサスペンションは最も注目すべきカウンターカルチャーとなっています。一方で、ボディハッキングもまたメディアを賑わせているので、ステラークさんのこれまで芸術活動の再評価のタイミングでもあります。そういう意味では、今年の身体改造シーンは、本当にステラーク・イヤーなんですよね」

――クレイジーお爺さん、本当に格好いいですよ!
(つづく)

【イベント情報】
●6月4日20:00~ @千駄木Bar Isshee
自伝的映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』が超話題の末井昭、人気の地下アイドル・姫乃たまをゲストに、ケロッピー前田&TKD武田がフォトスライドショー&ライブ演奏を披露する。演奏後にはトークも!
LIVE & TALK ケロッピー前田+TKD武田 ゲスト:末井昭 姫乃たま
http://www.bloc.jp/barisshee/

keroppi-0518.jpg

●6月10日18:00~@新宿ROCK CAFE LOFT
「カウンターカルチャーを追う男・ケロッピー前田《音楽で紐解くカウンター》」
第一部 ケロッピー前田はこんな音楽を聴いてきた 
第二部 身体改造&ボディサスペンション写真作品スライドショー
http://www.loft-prj.co.jp/rockcafe/

●7月7日19:00~ “Topophilia” @Titanen Piercing Gallery Berlin
『トポフィリア』展(ベルリン・タイタン・ピアッシング・ギャラリー)
http://www.titanen-piercing.de

●7月12日-14日“After Fukushima” @HfG of Main
『アフターフクシマ』展(フランクフルト・HfG美術大学大講堂)
http://www.hfg-offenbach.de/en#feature_and_news

●7月15日-20日 ボディサスペンション世界大会『SUSCON』(ノルウェー・オスロ)
https://wingsofdesire.org


■ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)

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1965年、東京生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。書著に、前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)や『クレイジートリップ』(三才ブックス)など。昨年は、TBS人気番組『クレイジージャーニー』でノルウェーのボディサスペンション世界大会を紹介し、過去の番組で反響の大きかった“極限の光景”ベスト10にて、第1位に選ばれている。
公式twitter:@keroppymaeda

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