『RAW SOUL』李岳凌/赤々舎。バイクのサイドミラーに写り込む影
――中国の写真専門メディア(https://www.chiten-akaaka.com/interview-yehlinlee)のインタビューで、「(写真で)現実を切り取りながら、現実を超えたもの、言葉で言い表せない何かを追い求めているのかもしれない」と答えていましたね。この「何か」について、もう少し詳しく教えてください。
李 例えばこの写真では、神棚の札の1つに「人の成すことは神が見ている」と書かれています。そして、バイクのサイドミラーに私の影が写り込んでいる。
私の預かりしれない何かの力が働いて、私をその位置に立たせた。それを撮ったということなんです。『RAW SOUL』に収められた多くの写真を撮る際には、予期せぬ何かが自分の背中を押すかのように動いている。そういう感覚がずっとありました。
――「目で捉えられないが実在する何かを実感することは可能だ」ともおっしゃっていましたが、写真には物理的に見えるものしか写らないはずですよね。
李 写真そのものは物理工学的なものですが、それを見て理解するのは人です。作家が意識的であろうと無意識的であろうと、写真は直接的に人々の感受性に訴えかけ、暗示や連想を促すものです。時にそれは文化的背景、コンテクストにまで及び、表象の世界の裏側まで意識を伸ばすことができます。
そのうえで、写真集という表現形式は太陽系のようなものだと思うんです。写真1枚1枚が惑星のようなもので異なる方向を示している。それらが1つの核心に向かう。本という姿形によりそれは強化され、見えない1つの力として生成されていくわけです。