『RAW SOUL』李岳凌/赤々舎
■エンジニアから写真家への転身
――元はエンジニアだったそうですね。なぜ、エンジニアに?
李 職を得やすいという実際的な理由や両親の勧めからです。それで大学では電気工学を専攻しました。若い頃は父や母の期待、社会の期待に応えるような人間だったんです。
――なぜ辞めたのですか?
李 前うつ状態になってしまって。
――何か理由が?
李 仕事を見つけやすいこと以外に、エンジニアとして自分が学んでいることすべてが自分とどう関係があって、どんな意義があるのかがわからなかった。地に足をつけて生きていなかったんですね。
電気工学を通して触れる世界では、0と1のビットをいかに効率的に転換するかと言うことが中心で、目の前の問題を限られた方向に手早く解決することだけが求められます。馬のレースのように、目隠しされたまま、ただ前へと速く走らされる。その一方で、心の中では大きな何か欠落していました。