『RAW SOUL』李岳凌/赤々舎
――辛かったでしょう。
李 いくら真剣に取り組んでも技術はより新しくより速いものに向かい、すぐさま次世代のものに塗り替えられる。いわば、線状の進歩観の世界では、自分が作ったものはあっという間に淘汰され、そこに私がいようといまいと世界は変わらない。そんな自己懐疑に陥ってしまったんです。
――そこからなぜ音楽を作り始めたのですか?
李 2000年前後に姚大鈞(ヤオ・ダージュン)のネット配信番組『前衛音楽網』に触発されたのがきっかけです。週1回、実験的なテクノやノイズミュージックから仏教音楽、現代ジャズ、北インドの伝統音楽、ロシアのロックまで広く網羅するだけでなく、音楽をより広範に深い視座で捉えていたことに感銘を受けました。
――その番組で印象に残っていることはありますか?
李 姚氏は面白いことを言っていました。「僕らは音楽の鑑賞の仕方がわかっていない。それは自分と対峙していないということだ」と。
――どういうことですか?