9人怪死の最強未解決事件【ディアトロフ峠】真相に迫る本『死に山』! 先住民、脱走囚、ミサイル実験、エイリアン説…!!
真相に近づくため、アイカー氏はついにディアトロフ・グループの旅路をたどる旅を敢行する。クンツェヴィッチ氏によれば、グループの旅程を再現する試みはこれが最初であり、アメリカ人が冬のホラチャフリに挑むのもこれが初めてだという。アイカー氏らはエカテリンブルクを旅立ち、電車や車を乗り継ぎ、ディアトロフ・グループが立ち寄った小学校なども取材しながら、厳寒のホラチャフリを目指す。
現地取材を終え、アメリカに戻ったアイカー氏は「真相」を突き止めるべく、改めて様々な説を検証する。そして、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の科学者らの協力を得て、ある一つの結論へと至るのであった。
とはいえ、アイカー氏のたどりついた「真相」は結論として広く支持されている訳はなく、アイカー氏の取材に協力したクンツェヴィッチ氏も納得しているとは思えない。ちなみに彼は、今年8月に発見されたミサイル事故説の証拠物(詳しくはこちらの記事)に対し、一部メディアに好意的なコメントを寄せている。
ただ、「真相」の妥当性を抜きにしても、それでもなお本書を読むべきといえるのは、まず第一に本書がグループの旅路や事件現場、さらに捜索の模様について詳細に記述しており、事件を考察するうえで重要な資料となりうるからだ。そしてさらに、旧ソ連のごく普通の人々や生活を描いたものとして、非常に興味深い内容になっているからだ。
本書では謎を追って取材する現代のアイカー氏、ホラチャフリへと向かうディアトロフ・グループ、そして事件後の捜索隊や遺族ら、という3つの視点が交互に描かれる構成が取られている。捜査関係者の資料や一行の日誌等を元に描かれた旅の様子や捜索時の模様もさることながら、本書の読みどころの一つは、1950年代、フルシチョフ政権下の「雪解け」の時代のソ連の大学生や市井の人々の様子を克明に描写している点にもある。
ディアトロフ・グループは、スポーツ指導者となるために必要なトレッキング第3級の資格を取るため、ウラル山脈のオトルテン山を目指し、厳寒の難ルートに挑んだ。本書に描かれるのは、陽気に歌い、時に夜通し語り合い、おどけた姿を写真に残す、どこにでもいるごく普通の若者の姿だ。休息を求めてたまたま立ち寄った小学校での子ども達との交流、宿を提供してくれた人里離れた山奥の労働者キャンプでの一夜などなど、グループの旅路を追う中で、当時のソ連の人々や暮らしの一端が敬意と愛情を持って興味深く描かれているのである。
そして本書の最後に描かれるのは、アイカー氏がたどり着いた「真相」を元に再現されたディアトロフ・グループの最後の夜である。これまでに積み上げられた丁寧な描写も相まって、彼らの最期は非常にもの悲しく、説得力あるものとなっている。
インターネット上では現在でも事件を扱うサイトが増えている。アイカー氏をはじめ、今なお世界中の多くの人々を魅了してやまないディアトロフ峠事件。著者が行き着いた真相に同意できるかはともかくとして、本書は入門書として格好の一冊といえるだろう。今まで事件を知らなかったという人も、本書を読んでぜひこのミステリーに挑んで欲しい。
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2024.10.02 20:00心霊9人怪死の最強未解決事件【ディアトロフ峠】真相に迫る本『死に山』! 先住民、脱走囚、ミサイル実験、エイリアン説…!!のページです。ディアトロフ・インシデント、ディアトロフ峠事件、書評、死に山などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで