プーチンが本気の「イスラエル報復・撃墜」に燃え始めた! アサド政権に“超高性能兵器”供与、報じられない裏側とは!?

――軍事研究家・塩原逸郎が緊急寄稿!

 以前の記事<ロシア軍機、味方から撃墜され15名死亡! 単なる“誤射”ではないイスラエルの恐すぎるサイバー陰謀とは!?>で報じたロシア軍機撃墜事件に対し、ロシアが対抗措置として高性能防空システムS-300をシリア政府軍(アサド政権)に供与した事は、既に多くのメディアで報じられている。この記事では、大手メディアが書かない裏側を紐解いていきたい。

 まず、S-300には各種バリエーションが存在し、今回アサド政権に供与されたのはS-300PMU2と称されるタイプだ。このタイプは既に中国やイランが運用しており、射程は200kmに及ぶ。

 
 本来、S-300PMU2は同時に36もの航空機、ミサイル、ドローンといった対空目標と交戦可能な能力を持つが、今回ロシアはアサド政権に対し地対空ミサイルの発射台(TEL)は4基のみ供与している。1台のTELに搭載可能なミサイルは4発であり、従ってアサド政権のS-300PMU2は同時に最大16もの対空目標と交戦する事が可能となる。従来、旧式の防空システムしか保有していなかったアサド政権は、今回飛躍的な防空能力向上を遂げる事となるのだ。

 アサド政権へのS-300PMU2供与は、今後イスラエル空軍がシリアに容易に空爆できなくなる事を意味する。イスラエル空軍は、内戦以来、アサド政権の軍事施設やシリア領内に展開するイラン革命防衛隊戦力、テロ組織であるヒズボラに対し度々空爆を行ってきた。それが可能であったのも、アサド政権の防空システムが旧式であり、電子妨害・無力化が容易であったが為である。

 しかし、S-300PMU2は新しいシステムで、電子妨害も困難だ。度々シリア領内への空爆を行ってきたイスラエル空軍のF-16が不用意に飛来すれば、撃墜は不可避。イスラエル空軍の新戦力であるステルス戦闘機、F-35を用いればS-300PMU2の防空網をかいくぐる事は可能であろうが、これは最新鋭機の能力がアサド政権やロシアに分析される事も意味する。すなわち、手の内を明かす事となるため、イスラエル側も容易にF-35は投入できない。

 さて、アサド政権が自らS-300PMU2を運用する為には人員の訓練が不可欠であるため時間がかかる。それまでの間、アサド政権のS-300PMU2はロシア軍人の手により運用される事となる。仮にイスラエルがアサド政権のS-300PMU2の破壊を目論めば、それは即ちロシア軍人への攻撃を意味するのだ。この点でも、イスラエルは今後シリアで空爆を行う事は困難となったと言えよう。

 ロシアによるアサド政権へのS-300PMU2供与は、15名もの自国軍人がイスラエルの手で奪われた事に対する、プーチンの怒りの鉄槌に他ならないのである。

文=塩原逸郎

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