殺人を犯した“いい人”たちの闇 ― 友だちになれそうな死刑囚を犯罪ジャーナリスト片岡健が語る!
■殺人犯は被害者だった 救いようのない事件
——死刑囚のなかで、最も同情したのが奥本ですか?
片岡 最も同情したのが2010年に長野市で起きた会社経営者一家殺害事件の「首謀者」伊藤和史ですね。被害者が会社経営者の資産家なんですが、ヤクザ顔負けの怖い人だったようなんですよ。
——伊藤は、資産家から借金でもしたんですか?
参考記事:【死刑囚と面会】極悪殺人鬼・伊藤和史の“同情せざるを得ない”壮絶状況が判明! 一家3人殺害事件犯の実像
片岡 伊藤は何にもしていないですね。一緒に殺害した仲間は借金していて強引に住み込み奴隷みたいにされたんですけれど。伊藤は騙されて奴隷みたいにされた。
もともとは伊藤が風俗店で働いていた時に、同僚の兄貴分であるヤクザに借金させられて、金を巻き上げられたり奴隷扱いされたりされていたんです。けれど、そのうちそのヤクザが伊藤の目の前で、自分の舎弟に銃殺されたんです。伊藤は目の前で人が殺されるところを見たり死体処分を手伝わされたり大変だったんですよ。
——なぜ伊藤はそのヤクザの舎弟に殺されなかったのでしょうか?
片岡 使いみちがあると思われたんじゃないでしょうか。会社経営している舎弟の資産家一家の家に住み込みで24時間奴隷状態でこき使われることになった。逃げようにも監視カメラがあったし、「銃殺されたヤクザのようになってもいいのか」と脅されていた。自分が逃げても家族が殺られると思っていたので逃げられなかったんです。
——それは、壮絶ですね。それでも何とか逃げる方法はなかったんですかね。
片岡 それが、その資産家が警察と仲良くやっているところを見ちゃったんですって。それで、「警察に逃げ込んでもダメだな」と言う発想になってしまったんです。
——じゃあ資産家と警察が繋がっていたということですか。
片岡 繋がっていたんじゃないですか。ある程度。
——闇が深い事件ですね。
片岡 深いですね。なので、あれは死刑執行できないんじゃないですかね。
——伊藤さんには実際会われたんですよね。
片岡 会った時は30半ばでしたが、普通の朗らかな好青年でいたね。
——伊藤の件を見ると出会った人が悪かったと言うか、とてつもなく不運な人ですね。
片岡 不運すぎますよね。転がり落ちるようにどんどん不幸になっていくし救いがない。
——まさか資産家の人たちも自分たちが奴隷たちから殺されるとは思ってなかったんでしょうね。
片岡 まさか、殺されるとは思ってなかったでしょうね。伊藤は資産家たちの夜食を作らされていたのですが、睡眠薬を入れて食べさせたんです。朝方、起きていないのを確認して首にロープかけて殺した。
伊藤は全部手をかけていますが、仲間たちと一緒に殺している。首に縄をかけて両方から引っ張っているとかみんなで力を合わせて殺したんです。
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