1964年の東京オリンピック、実態は言い伝えと全然違った! 12人の脇役選手に取材した本がやばい!

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『東京オリンピック』 画像は「YouTube」より引用

 

――市川監督の映画では、競技の場面だけではなく、選手が弁当を食べるシーンや観客席の様子なども映されていました。そのことで「記録性よりも芸術性を重視している」と当時は批判されたそうですが、今の時代に改めて見てみると、むしろそういう余分に見えるシーンにこそ記録性があって面白い、という話がこの本に出てきますね。なかなか興味深かったです。

カルロス:この映画が論争を引き起こしたというのも、今で言う「炎上ビジネス」みたいなものだと思うんですよ。オリンピック担当大臣の河野一郎に酷評されて、賛否両論が巻き起こって、大臣と監督の間に女優の高峰秀子が仲裁に入って、とか。今の時代にツイッターとかで喧嘩しているのと面白がられ方は一緒だったと思うんですよね。

 もちろん、この映画の中の東京オリンピックというのも、市川監督のフィルターを通して描かれたものではあるんですけど、今では当たり前になっているものが当時は珍しかったんだなとか、そういうのがよく分かりました。面白いし、記録映画としてすごくよくできた映画だと思います。

 市川監督は「オリンピックとは何か」っていう問題に関してもちゃんと言及していて、本人なりの解答もちゃんと出しているんです。だから、この映画は記録にもドキュメンタリーにもなっている。僕が見た東京オリンピック関連の資料の中では、これがいちばん面白かったですね。

 

――これだけ大きいイベントなのに、実は具体的にどういう大会だったのかというのがあまり語られてなかった、というのは面白いですね。

カルロス:今回取材した12人に共通していたことは、新聞の記事とか見せるじゃないですか。そうすると、新聞の方が事実よりも盛って話していたりするんですよ。「資料でこういうふうに書かれていますけど」って言ったら、「これは大げさです」「こんなことはなかった」というような下方修正が入ることがほとんどでした。

カルロス矢吹

 

 自分をすごく見せようとして事実よりも盛って話す人はいると思うんですけど、実際に出回っている情報よりも下に修正するっていうことは、その話は信用できるな、と思いました。むしろ、資料がつまらない理由ってそれなんだな、と。周囲の方が1964年大会に下駄を履かせていたというか、周りが盛り上がりすぎちゃってて、選手たちの方が冷静だったんでしょうね。

 

――スポーツって意外とそういうものかもしれないですね。スポーツ新聞なんかでは盛り上げるために何でも派手に書きがちだけど、アスリート本人が考えていることはそれとは違ったりするんでしょうね。

カルロス:新聞が嘘を書いていたとは思いませんが、ローマやヘルシンキ大会のことも新聞で調べて、それを選手自身に確認してもらうと、そもそも数字が間違っていたりするんですよ。たぶん、当時は海外にそんなに記者もいっぱい派遣していなかったと思うので、取材で全部カバーしきれていなかったんでしょうね。選手自身が「36位じゃなくて37位だよ」とかそういう数字の訂正もやってくれたので、このタイミングでこの企画をやって良かったなと思いました。

文・取材=ラリー遠田

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