『ニッポン国VS泉南石綿村』アスベスト問題を追った映画監督・原一男が語る裏話! 国と戦う市民団体「怒っていいんだよ…」

 海外でも高く評価されるドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』で知られる原一男監督。その原監督の23年ぶりの最新作『ニッポン国VS泉南石綿村』のDVDが発売された。


 アスベスト(石綿)で健康被害を負った人々の国家賠償請求についてのドキュメンタリーである本作。アスベストの被害に詳しくないという方も多いかもしれないが、住んでいる家の壁のすぐ裏側に存在するかもしれない問題と考えると、実は多くの人にとって身近なテーマだとも言える。しかも、怒りという誰もが抱く感情も本作の重要なテーマとなっているので、なおさら多くの人の心に響く必見の一本となっている。

 そんな本作の魅力を、原監督と、原監督の写真撮影のモデル(そのときの写真と記事はこちら)となった作家・石丸元章さん、SMアイドルのフェッティーズのNEKOさんに徹底的に語り合っていただいた。全3回にわたる濃厚座談会をご堪能ください!

左から石丸元章さん、原一男監督、フェッティーズのNEKOさん

石丸 『ニッポン国VS泉南石綿村』、見させていただきました。すばらしい!

 ねえ、よくできてるよねえ(笑)。

石丸 テレビとは違う、映画のドキュメンタリーの面白さがあった。

 長い長いって言われているけど(『ニッポン国VS泉南石綿村』の上映時間は3時間35分)、私らだって長い映画には最初ちょっとげんなりするところはある(笑)。『ゆきゆきて、神軍』は2時間2分なんですよ。そこまで縮められたのは、編集の鍋島惇さんがプロ中のプロだったからだと思う。『ゆきゆきて、神軍』を短くできたもうひとつ理由は、エネルギーを凝縮するために奥崎(謙三:『ゆきゆきて、神軍』の主演)さんのパフォーマンスのシーンをぎゅーっと縮めているところにあるんです。ところが、今回の『ニッポン国VS泉南石綿村』の人たちには、奥崎さんのようなエネルギッシュな強さっていうのはないんですよ。そうした普通の人たちが持つ微妙な感情の露出をきちんと伝えようとすると、どうしても映像を重ねないといけない。そうすると長くなる。

NEKO 私は石綿問題について知らなくて。

 私も映画を撮るまでは知らなかったよ。

NEKO それで映画が長いから「眠くなったらどうしよう」って思ったんですけど、まばたきするのも惜しいぐらい展開がめちゃくちゃ速くて、あっという間の215分でした! 前半では登場する原告団の人がどんどん亡くなっていくような辛い場面のインパクトの強さに引き込まれ、後半はもはや人間ドラマで涙して観てました。

──8年かけて撮影したものが凝縮してあるから展開が速いんでしょうね。

石丸 『ニッポン国VS泉南石綿村』には石綿問題というテーマもあるけど、「人間の怒りの発露はどうあるのか?」という、人間存在の本質にかかわるテーマが描かれています。

 何かの問題を伝えるための映画もありますけど、人間の感情を描くのが映画であるっていう考え方が私にはあるんですよ。これは大先輩の今村昌平から学んでることで。テレビは時事性を求められるけど、映画は時事性よりも人間の感情なんです。人間の感情を描けていたかどうか。最終的にそこが勝負になる。

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