『ニッポン国VS泉南石綿村』アスベスト問題を追った映画監督・原一男が語る裏話! 国と戦う市民団体「怒っていいんだよ…」

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『ニッポン国VS泉南石綿村』(C)疾走プロダクション


──その大臣との面会を求めて、原告の方々が21日間も連続で厚労省に乗り込む場面では、正直言うと詰められる役人側に感情移入してしまいました。

原 原告団のほうが人数は多くてコワモテだし、役人側はイケメン風でひ弱だから、カメラを回してるときに「これは映画を見た人は役人に同情するだろう」と思った(笑)。そのことを柚岡さんに言ったら、「その都度、目の前の相手にちゃんとケンカを売らないといけない。それしかできないんだから」って言われましたね。上の人間は姿を現さないんだから。

石丸 すごいことをおっしゃってると思いますよ。彼らの戦ってる相手は人じゃないんですよね。制度だから。目の前にいる役人とか大臣も、個人としては石綿訴訟に関係ないわけです。自分もやはり、あのシーンを見て「この戦いはマズいんじゃないか。共感を得られないんじゃないか」と思ったけど、結局、21日毎日詰めかけたことで結果を引き出せた。

──ところで、原監督ご自身は怒るタイプなんですか?

石丸 映画の中に登場する監督の声はのんびりして、怒ってるように聞こえないんですよ。

NEKO CINEMA塾(原監督の動画配信番組。映画監督との対談が行なわれた)で中野量太(『湯を沸かすほどの熱い恋』などの映画監督)さんと話すのを見たんですけど。育ちのよさそうな中野さんの本音を引き出すために、原監督がおだやかに詰め寄ってて面白かったです。笑顔でいじわるを言うじゃないですけど(笑)。

 大人ですから(笑)。

石丸 原監督がその穏やかな声で、原告団が怒るように挑発してんの。

 いや、私がというよりね、面白いところなんだけど、ドキュメンタリーのカメラが持ってる力がそういうのを引き出していくんですよ。

石丸 官邸前でマイクを持って演説した女性(佐藤美代子さん:原告団の一員。「欲しいのはお金ではない」という思いを切々と語った)がいたでしょう。あれもカメラの前だからこその名演説。

名演説を披露した佐藤さん『ニッポン国VS泉南石綿村』(C)疾走プロダクション

 佐藤さんは撮られてたのは知らなかったって言ってて、それはウソじゃないんだよ。ただ、カメラがあることを忘れるぐらい集中してしゃべった。そうやって、一世一代って言葉があるけど、一世一代の名演説が生まれたわけだね。

石丸 本当ですよ。あそこは映画のひとつのハイライト。あの「パパ~っ」って声は役者じゃ出せない。その一世一代の名演説の前を通行人たちが素通りしてる。世の中ってそんなものなのか。残酷なんだよ。現実ってすっきりしない。フィクションみたいに気持ちよくすっきりしない。その佐藤さんが映画の中で塩崎(泰久)厚労大臣に対して、「ありがとう」と言って喜ぶのも現実なんだよ。

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