『ニッポン国VS泉南石綿村』アスベスト問題を追った映画監督・原一男が語る裏話! 国と戦う市民団体「怒っていいんだよ…」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • コメント0
『ニッポン国VS泉南石綿村』(C)疾走プロダクション

 

──塩崎大臣が謝罪のために泉南を訪問しますが、原告団は納得できないという状態でした。ところが、大臣と手紙のやりとりをしていたらしい佐藤さんだけは、あの場で塩崎さんにお礼を言ったんですよね。

 あそこはね、佐藤さんにとってはいろいろとあったんですよ。もともと高裁までを撮ったところで短めのバージョンの映画(『命て なんぼなん? 泉南アスベスト禍を闘う』)を作ったんですよ。そのDVDを原告団の人たちに渡したら、佐藤さんは塩崎さんに見てもらいたいってDVDを送って。塩崎さんはそれを見たんだって。

石丸&NEKO へ~っ!

 原告団に同情して見たかどうかは分からないよ。自分自身がヤバく映ってないか確かめるために見たんだろうって私は思うけど、佐藤さんは塩崎さんがDVDを見てくれたことに「ありがとう」って言ったの。

制作スタッフ ただ、試写で見て「なぜ簡単に大臣に頭を下げたんだ」って佐藤さんに言う人も結構いて。

 あそこの編集を変えようかと思って、プロデューサーと編集マンとも話したけど、編集マンは「どういう事情があれ、権力に対して“ありがとう”と言ったことは変わらない」と言うわけよ。それも一理あるなと思った。

石丸 佐藤さんは「ありがとう」って言ったほうが気持ちが楽になるんだから、しょうがないよ。真心が届いた、真心で返してくれたと思いたいでしょう。

制作スタッフ 佐藤さんは裁判の結果、補償対象から外されましたけど、なんで自分が線引きされたのか今もずっと考えるそうなんです。そして、国はどんなことでも必ず線引きするということを証明するために自分が選ばれたんじゃないかと思うようになったそうです。その言葉を聞いてすごいなと思いました。

石丸 それはすごい発見ですよ。国って全面的には自分の失敗を認めない。権力ってそういうものなんですよね。原告団が最高裁で勝つから見る側はカタルシスがあるけど、線引きがあるから全部すっきりするわけじゃない。何かがのどに引っかかったような現実を残して、映画が残る。そういう意味でも、ドキュメンタリーの面白さがある映画だったな。

 座談会の第1回はここまで。次回は原一男監督の女性観や、時事問題について語り合っていただきます!


DVD『ニッポン国VS泉南石綿村』
監督:原一男
製作・配給:疾走プロダクション
収録分数:約215分
価格:5800円(税別)
発売:ハピネット・ピクチャーズ
特典:約67分の映像特典、オリジナル劇場予告編、小冊子-泉南の皆さん-

健康被害に遭った、大阪・泉南の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその家族が損害賠償を求めて、2006年に国を訴えた。その裁判闘争などの人間模様を、『ゆきゆきて、神軍』の原一男が8年にわたって撮影した、入魂のドキュメンタリー映画。

文・取材=武富元太郎

コメントする

画像認証
※名前は空欄でもコメントできます。
※誹謗中傷、プライバシー侵害などの違法性の高いコメントは予告なしに削除・非表示にする場合がございます。