鬼畜系の弁明 ― 死体写真家・釣崎清隆寄稿「SM、スカトロ、ロリコン、奇形、死体…悪趣味表現を排除してはならぬ理由」

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日本航空123便墜落事故機のJA8119。画像は「Wikipedia」より引用

 死体写真の分野でいえば、80年代における写真週刊誌の隆盛の中で、1985年に発生した日本航空123便墜落事故でスクープされた死体写真の露出が社会問題化し、その後の表現規制に大きな影響を与えることになるが、1995年に刊行された『死体の本』(宝島社)に見える通り、当時我々の中ではゴア表現の規制に対する問題意識や危機感が共有されていたのは確かだ。

さらに90年代当時においても、死体ブームといわれるさなかでも、誌面に掲載された死体写真はほとんどがモノクロであり、そこには「鬼畜」なりの配慮が働いていたわけである。私は死体写真家人生も四半世紀を経た昨年末になってやっと本邦初の正式写真集を刊行することになったが、実は90年代当時には、モノクロでなら写真集を出すというオファーを複数受けていた。が、私はそれを拒否し続けてきたのだ。何となれば私の表現がカラー表現だからである。また1994年に出版されて話題となった死体写真集『SCENE』(スコイア)はモノクロの仕立てだが、その素材とはコロンビアの写真家、アルバロ・フェルナンデスが所属するタブロイド紙『エスパシオ』で一面を飾ったカラー写真である。

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画像は「Amazon」より

 今日センセーショナルで目立つだけに露悪的に思い起こされるカラーの死体イメージとは、一義的に雑誌『BURST』(コアマガジン)や死体ビデオ『デスファイル』(V&Rプランニング)のものにすぎないのだ。

 90年代当初、私はまさに『BURST』で誌面を共有する他の実作者たちとたびたび対立した。作家の花村萬月氏は死体写真を掲載する雑誌の編集姿勢をこう糾弾した。

「日本人はタイや中南米といった貧しい国々から死体まで搾取するのか」

 今でいうヘイト表現だというわけだ。こうも批判した。実際の死の現場を知っていればこんな破廉恥な表現はできないはずだ、と。

そこには80年代サブカルチャーにおける悪趣味の延長にある偏見があった。危険な現場で死体と直接対峙し、命がけで美の表現を試みる作家の存在など、特に日本人ごときに存在するなどとは、想像もできなかったのである。

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