鬼畜系の弁明 ― 死体写真家・釣崎清隆寄稿「SM、スカトロ、ロリコン、奇形、死体…悪趣味表現を排除してはならぬ理由」

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 もちろん私は鬼畜系を全肯定するつもりはない。確かに不道徳で反社会的であったことを否定しない。この私ですら眉をひそめる表現に満ち溢れていた。大義名分を放棄した赤裸々な過激表現を擁護することが困難だ。

 とはいえ、それがどうした、というわけである。我々は当初から歪んだ倫理の濫用をこそ不健全ととらえていた。裸族のドキュメンタリーという言い訳をしてポルノグラフィーを堂々と提示した60年代のモンドから80年代サブカルチャーに至るまで使い古されてきた心にもない理屈、詭弁が抜け落ちた部分をして、鬼畜系が叩かれるのかもしれないが、欺瞞を欺瞞と知りながらいつまでも旧態依然とした欺瞞にしがみつき、進歩的美意識を信じることができない表現精神の硬直の方が私には不健全に思えるのだ。それに抵抗できない事態をこそ言論の堕落と言わねばならない。

 私自身も表現にあたって「メメント・モリ(死を想え)」というモチーフを否定するところから始めたものである。

 青山氏の「お前ら、本当は死体見て発情して、はしゃぎたいんだろう」という身も蓋もない扇動をどう解釈するか。これを世紀末のパーティーという時代背景抜きに解釈することは浅薄すぎる。人間存在の根幹を曝露しようとするラジカルな問題提議であると知るべきだ。そういう方法論なのだ。カウンター・カルチャーとはそうしたものだ。

 そして実際に社会がこれによって煽られることなどなかったのだ。逆に健全で強靭な社会の存在こそが、過激表現の自由を保障するのである。

 しかるに鬼畜系は自らの首を絞めるかたちで、表現規制をいたずらに助長した面は否めない。結果的に文化的焼き畑農業になってしまった。

 鬼畜系の悪い部分をあげつらって全体像を否定するのは間違いだ。過激表現のチキンレースが繰り広げられたあの時代は、いくら下品だったとしても、羨むべき時代だったと言わざるを得ない。

 しかしながら、あの日々に世界的視野をもって自由表現の枠を押し広げようと、しゃにむに見た夢の結果が、かくも無残な吊るし上げとは。あまつさえ当時、無力に時代をやり過ごしてきた業界内のスリーパーたちが、今になってポリティカル・コレクトネスの後ろ盾を得て、懺悔した「良識」の手先として攻撃の前衛に立つことになろうとは、思いもよらなかった。

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