——「声をかける」というプロセスが写真に及ぼす作用、その時に生まれる思いを大切しているんですね。
水島 声をかけて関係を作って撮ると、それが、見た目にいい絵柄の写真にならなくても、その時の記憶が写真になっていくのだと思っているんです。
——撮影した人の中には、うかつに声をかけにくい雰囲気の人もいます。撮影のさいにトラブルになることはありますか?
水島 ありません。撮影前にきちんと説明するし、名刺も渡します。欲しい人にはプリントもプレゼントします。だから、トラブルになることはないですよ。
——通りすがりの撮影で出会った人と付き合いが始まることはありますか?
水島 ありますよ。たとえば、以前撮らせてもらったゴミ屋敷のおばあさんとは喫茶店で一緒にコーヒーを飲むことがあります。『お茶飲もうよ』って電話がかかってくるんですよ。
——夜の写真が多い印象を受けたのですが、理由があるのですか?
水島 夜に人と会うのが好きなんです。夜のほうが、出会えた実感を深く感じるから。
——確かに、夜の街は余計な要素が闇に消えるぶん、相手と真っ直ぐに繋がれる感覚が強いのかもしれませんね。
水島 昼間のほうが人も多いし撮りやすい。けれど、夜のほうが親密になれる気がするから、夜に撮った写真が多くなるのだと思います。