——被写体の姿を借りて、寄る辺なさを感じていた頃の自分自身を撮っているような感覚だったのでしょうか?
水島 そうなのかもしれません。「溜まり場」、「居場所」っていうのを僕は求めていて、写真でそれを作ろうとしているのだと思います。そこに、撮らせてもらった人や見てくれた人を招き入れるというか、「一緒に遊ぼうぜ」っていう感覚。自分が写真を撮る時に、そこに行けるような気になることがあるんです。写真を撮らない時も、歩きながら考えるんですよ。そういう時に「その世界に入った」って思えると、翌日の撮影がうまくいくことがあります。自分がそこに招き入れられている感覚と、先に行った自分が招いている感覚と、どちらもあるんです。
——ゴリッとしたイメージでありながら、写真から受ける印象は優しくてはかなく、あたたかいのは、水島さん自身が感じてきた寄る辺なさとシンクロした情景を撮っているからなのかもしれませんね。写真で溜まり場のような場所を作り出そうとするのも、同じような気持ちで生きている人たちと写真で繋がりたいという思いからなのかと思います。
水島 そうかもしれないですね。実社会で生きていると、人それぞれが息苦しさとか生きづらさみたいなものを抱えていると思うんです。でも、壁のコルクボードに貼られた写真の中ではみんなが笑っている。にぎやかな「溜まり場」ですよね。家出の時に転がり込んだあの部屋で写真を見た時に、僕にとって写真はどういうものなのかが定まった印象があって、それをずっと探していたんです。撮り続けるなかで少しずつ形になってきて、『Long Hug Town』というタイトルをつけることで、自分に撮っての「街」という1つの場所のようなものが見えてきた。その中に、過去の自分や今生きている人をその中に入れて、一人で遊んでいるような感じです。
——『Long Hug Town』という、架空の街を作っているのかもしれないですね。
水島 そうですね。そこが自分のユートピアなんです。
■8月6日から新作写真展を開催
2020年の東京オリンピックを目前にそこかしこで再開発が進む東京の街は、無機質で味気ない姿へと超高速で変貌している。効率や生産性という、数値化可能でドライな枠組みで再構築される街は、人が持つ匂いや体温、湿度を切り捨てて行く。
そんな時代の流れと逆行するかのように、人の存在を濃密に感じさせる水島さんの写真に惹かれるのは、見る者の無意識が今の時代に窒息感を感じ、生身の人間しか持ち得ない生のぬくもり、ウェットな何かを求めているからなのかもしれない。
8月6日より、水島さんが運営メンバーとして参加している、東京・四谷四丁目のTOTEM POLE PHOTO GALLERYにて写真展が開催される。「Long Hug Town」に続く、撮り下ろしの新作展であり、そこにはまた新しい目線で撮影された “街とそこに生きる人々の姿” があるはずだ。ぜひ、会場に足を運んでいただきたい。
取材・文=渡邊浩行(モジラフ)
■作家プロフィール
水島貴大(みずしま・たかひろ)
写真家。1988年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業。2014年、1_WALL展ファイナリスト。2017年、Young Art Taipei Photo Eye グランプリ受賞。
URL:http://mizushima-takahiro.com/
■写真集インフォ
『Long Hug Town』
発行:STAIRS PRESS
価格:3600円(税込)
URL:http://stairspress.com/2018/04/01/long-hug-town/
■写真展インフォ
水島貴大写真展『That Bright Planet』
期間:8月6日(火)〜8月18日(日)
会場:TOTEM POLE PHOTO GALLERY
住所:東京都新宿区四谷四丁目22 第二富士川ビル1F
開場時間:12:00〜19:00
休廊日:月曜日
URL:http://tppg.jp/
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