——そこでの印象に残っている出会いはありますか?
水島 出入りしていたある女の子が、いつも帰り際に「Long Hugして帰ろうよ」って言ってハグしてくれていたんです。その印象が強くて、写真集のタイトルの『Long Hug Town』のヒントにもなりました。彼女が言った「Long Hug」に自分が好きな街、「Town」を加えたものなんです。
——そういうことだったのですね。いろいろな出会いが水島さんの写真に繋がっている。
水島 自分の周囲の小さな人間関係が写真で繋がり、個人から街へと広がって、今もその延長で撮り続けている感じです。思いつきでしか動いていないけれど、これからどこまで行くのかが楽しみです。
■写真を撮ることは「居場所」を作ること
——公園でたむろすヤンチャな少年たちや、うらぶれたスナックで働くホステス、和彫りを入れた肉体を晒してタバコをふかす男、道路際に転がり虚ろな目をした老婦人やホームレスほか、水島さんが撮影してきた人物からは、それぞれに何か事情を抱え、ともすると、そのまま世の中からこぼれ落ちてしまいそうなはかなさを感じます。なぜ、そういう雰囲気の人に魅かれるのでしょう?
水島 どうしてなんでしょうね? これまで何度も同じことを聞かれてきたんですけれど、「そういう人が好き」という以外に、答えが出るようで出ない。いつも詰まるんです。ほんの数年間ですけれど、家出をしていた時の記憶が大きいということは言えます。渋谷のジャンキーコミュニティを撮っていた時も、そこに集まる人たちに、家出をしてあてもなくさまよっていた頃、溜まり場を転々としていた頃の自分を重ね合わせていましたから。