昭和を代表するオカルト漫画10作品を珍マンガ研究家が選定! 超常現象、SF、陰謀論、超古代文明… これが必読オカルトマンガだ!

【80年代以降、SF伝奇アクションの漫画も増える】

『サイボーグ009』13~15巻、石ノ森章太郎(秋田書店、1980~81年。復刻版は復刊ドットコム、2017年。キンドル版もあり)

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 長期シリーズ「サイボーグ009」は、オカルト的な題材をときどき取り上げるが、ここでは月刊漫画少年(朝日ソノラマ、1977年7月号~79年9月号)に連載された中編エピソード「海底ピラミッド編」を紹介する。

 バミューダ・トライアングルの海底に発見された「ピラミッド」をめぐり、009たちサイボーグが、悪の組織や宇宙人と戦いを繰り広げる。作中では「ブラックヘリコプター」(陰謀論にときおり登場する、国籍・所属不明の黒いヘリコプター)、月に関するオカルト本『それでも月に何かがいる』の「月には人工物がある」という説、謎の人物「サン・ジェルマン伯爵」(18世紀にヨーロッパで活躍した、ルイ15世の寵愛を受けたこともある人物。不死伝説がある)などのオカルト的な名詞が飛び交う。また、15巻には、本編を補完するかたちで「サン・ジェルマン伯爵」についての読み切りが収録されている。この短編は「、海底ピラミッド編」で「タイムマシンを駆使し、人類を操ろうとする異星人」として登場したサン・ジェルマン伯爵が、本当は何者だったのかを作者の石ノ森本人が考察するというものである。

 石ノ森章太郎は、自身が携わり後に原作者の平井和正が牽引する『幻魔大戦』とはまた別個に、オカルト系の話題をよく自作に取り入れていた。

『ドラえもん』第23巻、藤子・F・不二雄(小学館、1982年。キンドル版もあり)

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 藤子・F・不二雄は、数多くオカルト・超常現象を漫画のネタにしてきた。たとえば『ドラえもん』の「ツチノコ見つけた!」(1975年)(、正確には『ドラミちゃん』の)「ネッシーが来る」(1974年)、『エスパー魔美』の「未確認飛行物体!?」(1977年)などがオカルトを題材としたエピソードの一部である。どれも、できるだけ科学的、SF的なアプローチをしている。

 そんな中、『ドラえもん』の「異説クラブメンバーズバッジ」(1980年)というエピソードは、少々変わっている。たとえば地球空洞説(地球の内部は空洞になっているという説)などの「異説」が、バッジを付けた者たちの間でだけ現実化するのだ。マイクに「地球空洞説は正しい」と吹き込みバッジをつけると、バッジを付けた者にとってだけ、地球内部が空洞になるのである(ジャイアンとスネ夫もバッジにより地底世界を見てしまったため、騒動が起こる)。

 オカルトや超常現象を題材とした漫画は数多いが、すでに間違っているとされている異説を、信じる者たちだけで共有し、「現実化」させるという話はめずらしい。正確には「、幻覚の共有化」だと見るべきだが「、異説クラブメンバーズバッジ」で具現化された世界に現実世界の物質を残してきても問題はなく、さらにはバッジを付けていない人々にもその「異説」が共有化される可能性があるという描写がある。つきつめて考えるとよくわからないのだが、まあ、ドラえもんのひみつ道具はどれもわりとザックリしているので……。

 ちなみに、2019年3月から公開された劇場用アニメ『映画ドラえもんのび太の月面探査記』では、この「異説クラブメンバーズバッジ」が、上記の矛盾点を整理し、重要なアイテムとして登場している。

 また、「E.T.大研究」「超能力大研究」などの項目を立て、さまざまな、いまだに立証されたとは言いがたいとされる異説について書いた『藤子・F・不二雄の異説クラブ』全2巻 藤子・F・不二雄(小学館、1989~90年、復刻版は小学館、2014年)という書籍(漫画ではない)もある。この『異説クラブ』は、『映画ドラえもん のび太の月面探査記』公開に合わせ、雑誌『ムー』2019年4月号で特集が組まれている。

(続きは『昭和・平成オカルト研究読本』でお読みください)

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昭和・平成オカルト研究読本』(サイゾー)


新田五郎(にった・ごろう)

1967年生まれ。趣味で一般的評価の対象外となった漫画の捜索をしている。口裂け女や「恐怖新聞」におびえ、UFOやスプーン曲げをテレビで見まくった少年時代を過ごした。共著に『トンデモマンガの世界』(楽工社)。元・と学会会員。

※ ASIOS編著『昭和・平成オカルト研究読本』(サイゾー刊)の出版記念イベントが8月4日(日)に開催されます。詳細は下記をご覧ください。

http://www.asios.org/event_20190804

文=新田五郎

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