身長2m以上の白いドレスの巨大女が佇む、本当にあった怖い話 ー 『でる家』川奈まり子の実話怪談!
「このうち、家鳴りが多くない? あちこちギィギィいってるよね」
「まあ、古いからね。築60年ぐらいになるんじゃないかな」
「へえ。凄いね。言われてみれば、昭和レトロって雰囲気。素敵だね」
夏、聡さんには彼女が出来た。
そこで家に連れてきたわけだが、いつにも増して家中が鳴り騒ぐ。
――今日ぐらいは静かにしてくれよ。頼みますよ。
聡さんは心の中で家にいるであろうオバケたちに懇願した。が、家鳴りは続いた。気のせいではなく、いつもより喧しい。
「お仏壇に挨拶してもらいたいんだけど、いいかな?」
「もちろんいいけど、信心深いのね。私そういうの嫌いじゃないわ」
仏壇に向かって彼女と並んで手を合わせた。聡さんは胸のうちで「家鳴りが鎮まりますように。変なことが起きませんように」と真剣に祈った。
祈り終わると、彼女がぐるりと辺りを見渡して、家のことをまた褒めた。
「本当に素敵! 広々してて、開放的で!」
開放的な雰囲気になったのは、聡さんが居間と仏間を仕切っていた引き戸を取り外したためだ。居間は洋室、仏間は和室だから違和感があるが、お陰で空間が広がった。
聡さんと彼女は居間に移動しておしゃべりに興じた。その後、彼女が見たい番組があると言ってテレビを観はじめたので、聡さんは昼食の準備をするために台所に行った。昼食と言っても、ごく簡単なものだ。すぐに料理が出来あがり、聡さんはそれをトレイに載せて、居間へ運んだ。
居間の戸口に立ったとき、仏間の方がやけに暗く感じた。
仏間には掃き出し窓があり、本来、居間より採光がよくて明るいのだ。
奇妙だなと思いつつ、居間の中へ足を踏み入れた。
そして、ギョッと目を見張った。
「わあ、ゴハン作ってくれてたの! ありがとう! トイレかと思ってた!」
何も知らない……気がついていない彼女の後ろに、部屋の境目を塞ぐようにして巨大なものが仁王立ちしている。
彼女は仏間に背を向けて置いたソファに座っていた。その真後ろに、異常に身長が高くて横幅も広い、白いドレスを着た女がいる。
顔が仏間の鴨居に隠れて見えないほどの背丈。身長2メートル、体重は……200キロ以上あっても不思議ではない。
関取のような体格に、エレガントな純白のドレス。これだけでも破壊力のある外見だが、さらに、艶のあるカールした髪がキラキラと波打ちながら膝まで届いていた。
そんなものが、彼女の後ろに。
「どしたの? 鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してるよ? こっちに何かあるの?」
彼女は体をひねって自分の後ろを振り返った。すぐそこに奇怪なものが佇んでいるわけだが。
「べつに、なんにもいないじゃん。私がそのトレイ、ここのテーブルに運ぼうか?」
「ううん。やっぱり台所の方で食べよう。ダイニングなら調味料も取りやすいし、仏壇が見えるところで食事するのって、やっぱり何となく、ね?」
「ふうん。本当に信心深いのねぇ……。まあ、思ってたよりつまらない番組だったから、ここじゃなくてもいいけど!」
彼女には、巨大な女のことを話せなかった。
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2024.10.02 20:00心霊身長2m以上の白いドレスの巨大女が佇む、本当にあった怖い話 ー 『でる家』川奈まり子の実話怪談!のページです。霊能力、怪奇現象、家、川奈まり子、情ノ奇譚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで