身長2m以上の白いドレスの巨大女が佇む、本当にあった怖い話 ー 『でる家』川奈まり子の実話怪談!

 それから4年ほど経ったある晩、午前2時くらいのこと、仏間で蒲団に横になってラジオを聴いていたところ、すぐ近くで男が咳払いをした。

 家には自分しかいないはず。しかし、確かに聞こえた。

 空き巣狙いの泥棒が入った可能性もあると思い、恐る恐る家中を点検して、戸締りを確かめたが、おかしなところは見受けられなかった。

 そういえば……と、60代ほどの男性の霊がいると指摘されたことが頭に蘇り、ついに出たのだろうと合点がいった。

 そう腑には落ちても、あまり良い気持ちはしない。

 蒲団を被って眠ってしまおうと決めて、仏間に戻り、寝る体勢になった。

 しかしなかなか寝つけない。悶々としていたら、深夜3時ぐらいに再び金縛りになり、今度はスーッと押し入れが開いて奇妙なものが現れた。

 例の男の子と同じぐらいの背丈だが、顔や手足が皺だらけで肩ぐらいまである白髪を振り乱した、羽織袴の男である。

 それが、憤怒の形相でこちらに迫ってきた。

 ――やられる!

 危機感を覚えたが、身動きが取れず、逃げられない。

 気ばかり焦る。そのうち、そいつは首に両手を掛ける構えでのしかかってきた。

身長2m以上の白いドレスの巨大女が佇む、本当にあった怖い話 ー 『でる家』川奈まり子の実話怪談!の画像6
画像は「Getty Images」より引用

 と、そのとき、白い腕が横合いからシュッと出てきて、男と聡さんの間に割り込んだ。

 ――おばあちゃんだ!

 なぜか刹那にそう閃いた。すると金縛りが解け、同時に男の姿が掻き消えた。

 ――おばあちゃんが助けてくれたんだ。

 聡さんは仏壇にある祖母の位牌に手を合わせて、感謝した。

 彼は今でもその家で暮らしており、男の子の足音を聞いたり気配を感じたりすることがあるのだという。

 押し入れから出てきた小さな男や、部屋の境に立っていた巨大な女は、あれきり目にしていないとのことだ。

(了)

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文=川奈まり子

東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。
ツイッター:@MarikoKawana

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