「骨の湖」ー 最新科学でも解明できない、ヒマラヤの奥地に眠る正体不明の人骨

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「Daily Mail」の記事より

■混在する遺伝子グループ 世代に差異も

 発見の内容は昨年8月、オープンアクセスの学術雑誌『ネイチャーコミュニケーションズ』上で公開された。改めて38体分の人骨を対象としたDNA分析の結果、人骨は少なくとも3つの遺伝子グループに属していることが明らかになったのだ。

 最も多い23組の人骨が含まれるグループは、現代のインド人の祖先と目される集団で、これはカーストなどに基づいて細分化することもできる。

 続く14組の骨が含まれるグループは、地中海の東沿岸、現在のクレタ島やギリシャに住む人々と密接につながっている。残る1体は、東南アジアで広く見られる遺伝情報を有していた。

 生前の食生活から居住地を推定できる安定同位体による食性分析も、この判別を裏付けている。ハーバード大学に所属する研究論文の筆頭著者、エーディン・ ハーニー(EadaoinHarney)氏は、分析結果に驚きを感じたという。

「一般に東地中海に関連する祖先の存在が確認されたことから、ループクンド湖が単に地元民だけが関心をよせる場所ではなく、世界中から環境客が訪れるような場所だったことを示しています」

 さらに驚くべきことに、放射性炭素年代測定により、主要な遺伝子グループ2つの人骨について、最も離れたもので約1000年もの歳月の開きがあることが突き止められた。具体的には、7世紀から10世紀ごろにインド人の祖先たちが命を落としている。

 続いて17世紀から20世紀という比較的新しい時代に、地中海と東南アジアからの旅行者がこの湖を訪れていたことがわかった。

「骨の湖」ー 最新科学でも解明できない、ヒマラヤの奥地に眠る正体不明の人骨の画像3
「Daily Mail」の記事より

■謎は振り出しへ……

 これによって、偶発的な事象だけで問題を説明することが難しくなり、人骨の起源を悪天候とする仮説は覆されてしまった。ともすれば湖自体が聖地であったり、埋葬地であったり、自殺の名所であったり、我々が知り得ない特別な意味をもつ場所であったのかもしれない。

 人里離れた湖に、なぜ7世紀のインド人たちは足を運んだのか? なぜ17世紀の異邦人たちは呼び寄せられたのか? こうしたミステリーが魅力となって、ループクンド湖は今も多くの観光客を引き寄せている。

 厳しい旅程に負けじとハイカーたちが列をなし、土産物として骨を持ち帰るため、「骨の湖」の存続を危ぶむ声もあるほどだ。 謎の解明にはまだ時間が必要だが、現代の旅行者の倫理や常識を逸脱した振る舞いも、見方によっては人骨の主たちと重なる部分があるようだ。

参考:「Daily Mail」ほか

文=Forest

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