失われた沖縄のイレズミ成女儀礼「ハジチ」の企画展がヤバすぎる! 生き別れた母娘、約2千人のハジチ調査&シリコンアームに忠実再現!

 ハジチ(針突)と言われるイレズミの風習が沖縄に存在したことをご存知だろうか?

 沖縄県那覇市の県立沖縄博物館・美術館にて、特別企画展『沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー「歴史と今」』(2019年11月4日まで)が開催中である。

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“ハジチ展”の会場となった沖縄県立博物館・美術館、『台湾展 ~黒潮でつながる隣(とぅない)ジマ~』(2019年11月4日まで)も開催中


 この特別企画展は、都留文科大の山本芳美教授(文化人類学)が発案したもの。彼女は『イレズミの世界』(河出書房新社)や『イレズミと日本人』(平凡社新書)などで知られる、日本におけるイレズミ研究のオーソリティである。

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企画展のビジュアルイメージはイラストレーターのnamiが担当、沖縄ハジチや台湾原住民のイレズミを若い女性がしているところを視覚化


 「私は、修士と博士の論文で、それぞれ沖縄のハジチ、台湾原住民のイレズミを扱いました。今回、博物館の企画展として『台湾展-黒潮がつなぐ隣(とぅない)ジマ』が行われるということがあって、その姉妹展として、沖縄と台湾に共通するイレズミというテーマで特別企画展をやろうと考えました」と山本は解説する。

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沖縄のハジチ調査員の方たちとの談話会、当時実際に調査を担当された方々の話を聞く、企画展発案者の山本芳美教授(右端)

 彼女は、92年から95年の間、沖縄で1980年代から行われていたハジチ調査の最終段階とも言える現場に立ち会い、自身でも調査をおこなった。山本曰く、“世界のイレズミ研究のなかでも最大の記録”という沖縄全土のハジチ調査報告書、全17冊のデジタル複製版の公開が凄まじい。

 1980年代、読谷村立歴史民俗資料館館長だった名嘉真宜勝(なかまぎしょう)が指揮を取ってハジチ調査が実施され、それがきっかけとなって沖縄県の各市町村でハジチ調査が行われた。そのときに調査対象となったハジチをしていた老女たちは約2000人、沖縄にハジチ禁止令が課せられたのが1899年であることから考えると彼女たちは皆、85歳以上のお年寄りばかり、

「最も若かった方で明治28年(1895年)生まれ」(元調査員の方の証言)だったという。それでも、その数の多さには驚かされるばかりだ。過去の沖縄では、ほとんどの女性がハジチをしていたと考えてもいいのではないだろうか。

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ハジチ調査資料から、痛みをこらえるためにアズキを噛んだこと、ハジチ歌についても証言している

「沖縄ではハジチは成女儀礼として、大人になるためには入れなきゃいけない。ハジチをしないと遠い国に連れていかれる、あの世に行けないとまで言われるほど、必然的なものだったんです」と山本は強調する。

 ハジチに込められたのは、「古くは沖縄の死生観にも関わるものだった」(元調査員の方の証言)ともいう。

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1980年代、読谷村立歴史民俗資料館館長だった名嘉真宜勝(なかまぎしょう)が中心となって、沖縄全土のハジチ調査が行われた。その記録報告書は17冊、およそ2000人が調査対象となったという

 そして、もうひとつ、1980年代から90年代のハジチ調査の画期的な点は「地元のことは地元で調べる」という指針のもと、地元の若い女性たちを調査員として採用し、老女たちの方言に対応するばかりか、そこで聞き取られたことを地元で継承しようという意思があったことであろう。

 「それまでの調査は、外部の人が沖縄に来て、ハジチのことを調べていました。戦後は、沖縄戦で多くを失ったこともあって、沖縄の人たちは自分たちで沖縄の歴史を調べて残していこうという傾向が強いんです。そのことで貴重なハジチの資料も残せたんだと思います」(山本)

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