父親が息子を「殺すしかない」と決意するまで―長男殺害の元農水事務次官、映画化必至の「壮絶人生」とは!?

目が合うと、暴行の日を思い出す形相でした。『殺すぞ!』と強い声で言われました。私は本当に殺されると思いました」(同)

 熊沢被告は無意識のうちに包丁を取りに行き、小走りで英一郎さんの部屋に向かい、息子の胸に包丁を突き刺した。英一郎さんは抵抗したが、熊沢被告は「何度も何度も刺しました」と回想した。

 娘は自殺し、熊沢被告と妻は英一郎さんの恐怖におびえて毎日過ごしてきた。それが家族だけで完結すればまだ良かったが、ついに英一郎さんは一線を超え、運動会を行う小学生を攻撃対象としてみるようになってしまった。

「何をしでかすかわからない」。このモンスターを介錯できるのは、父親である熊沢被告しかいなかった。冒頭の取材記者は次のように語る。

「事務次官は官僚のトップ中のトップ。熊沢被告の仕事ぶりは真面目で、同僚職員は『家庭がこれほどおかしなことになっているとは想像もつかなかった』と驚きを隠せません。周囲に相談できず、1人で抱え込んでいたのでしょう」

 不謹慎な話だが、事件の全容が判明したことで、映画業界からは「間違いなく劇場化される」といった声も聞こえてくる。エリート官僚がひた隠しにしていた地獄の日々。事件が映画監督やプロデューサーを大いに刺激したことだけは間違いない。

 熊沢被告には16日、東京地裁で懲役6年(求刑懲役8年)の実刑判決が下された。中山大行(ともゆき)裁判長は「強固な殺意にもとづく短絡的な犯行」と述べ、長男を支援してきた背景事情を考慮しても執行猶予にはできないとした。それまでの公判で検察側は熊沢被告がパソコンで「殺人罪 執行猶予」と調べていたと指摘。決定的な暴力は1回限りで、発達障害に悩みながらもネット上で自分なりに人間関係を築いていた長男の「人生を奪う権利はない」と追及していた。

 一方の弁護側は、長男の暴力は激しく危険なものだったと反論。周囲に相談できなかったのは「精神安定剤を飲まなければ体が震えるほどの恐怖」があって、長男を刺激しないよう夫妻で2階に閉じこもっていたからだと説明し、執行猶予判決を求めていた。

 ネット上ではこの判決に賛否両論渦巻いており、しばらく議論は続きそうだ。

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