本当にあった「別れた男」のゾッとするほど怖い話! 執念、霊、とぐろを巻く蛇…川奈まり子の実話怪談「再会」
――幼稚園から高校まで同級生だった鈴木健朗と交際しはじめたのは、24歳のときだった。
高校卒業以降ずっと県外にいた健朗が、突然、家に電話をかけてきたのだった。
健朗は生徒会の連絡網で電話番号を調べたのだと説明していた。健朗と一緒に高校の生徒会役員をしたのは大昔のような気がしていたから、急な電話に驚いた。
何かと思ったら就職相談だった。健朗は、東京で会社勤めをしていたが辞めて帰郷した、今度は地元で就職したいから地元の企業で働いている同級生をリサーチしているのだと述べた。
そういえば、健朗は東京の私立大学に進学したんだっけと思い出しながら、何の権限もない平社員の身分だから役に立てそうにないと言って断ろうとした。
しかし、うまく断り切れず、翌日、会社の近くのコーヒーショップで会った。
……今にして思えば、そのときから迂闊だった。
勤務先を知られてしまった。また、路線バスで通勤できる場所に会社があることから、まだ実家に住んでいることもバレてしまった。
初め、健朗は紳士的に振る舞い、愛想が良く、ファッションセンスも洗練されていて、非常に魅力的に感じた。
彼は生まれつき片足が軽い内反足で、歩き方に癖があったのだが、背が高くて顔立ちも整っているから、そんなことは少しも気にならない。
向こうも積極的で、すぐに付き合いが始まったわけだが、男女の仲になった途端、飲食代でもホテル代でも何でも、こちらが金を払うのが当然のような顔をしはじめた。
そのくせ、態度はどんどん横柄になった。
プライドが高く、命令に従わせることを好み、ちょっとアドバイスなどしようものなら「馬鹿にするな」と怒ってむっつりと黙り込んだ。
それに、一向に就職活動をしている様子が見られなかった。
けれども、別れるのは難しかった。
こちらから別れ話を切り出す。すると、健朗は会社の前で待ち伏せをして、家までついてきた。
だから無視して家に逃げ込み、窓から外を見ると、まだ門のところに佇んでいるのだった。毎回そうだった。つまり、そういうことが何度もあったのだ。
根負けして出ていってあげると、彼は必ず笑顔になる。男でそういう喩えはおかしいかもしれないが、大輪の花が開くような美しい笑顔だった。
……甘いと思われるだろうが、しばらくは情も残っていたのだ。
付き合いだした頃に、高校のときから好きだったと告白されていた。青春時代の良い想い出が蘇ると、次いで、中学生の頃や小学生の頃の爽やかで可愛らしい健朗少年も記憶の底から立ちあがってきて、会っているときは絶えず頭の隅に6歳の「タケちゃん」や12歳の「鈴木くん」がいるように感じていた。
かつて健朗は、素直で頭が良く、誰に対しても親切な、良い子だったのに。
そう思うと、今や性格の悪いダメ男だとわかっていても切り捨てられず……。
2年ばかり、甘やかしてしまった。
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2024.10.02 20:00心霊本当にあった「別れた男」のゾッとするほど怖い話! 執念、霊、とぐろを巻く蛇…川奈まり子の実話怪談「再会」のページです。3.11、元カレ、怪談、川奈まり子、情ノ奇譚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで