本当にあった「別れた男」のゾッとするほど怖い話! 執念、霊、とぐろを巻く蛇…川奈まり子の実話怪談「再会」
「それっきり、2017年に公園で再会するまで、何も無かったんですか?」
「はい。本当に何も。ただ、あのときは、元カレが異常に黙り込んでいて普通じゃなかったので、家に火をつけられるんじゃないかと両親が怯えて、駅ビルで食事するのは止めて急いで帰ってしまって。でも、何も起きていなかったんですって。その後も実家には現れず、道ですれ違うこともなかったそうです」
「震災後にボランティアグループと福島を訪ねたときも?」
「ええ。ただし、偶然出会ってしまうことを恐れていたせいか、滞在中に夢に出てきちゃいました」
「どんな夢ですか?」
「一言で言って、悪夢です! 実家にいると元カレが訪ねてくるんですが、全身ずぶ濡れなうえに、明らかに死体なんですよ。……津波でたくさん人が亡くなったニュースを見てしまったせいで、あんな夢を見たんだと思っていました」
――コンビニエンスストアに宅配便を出しに行った帰りがけに公園を散歩したのは、独りでいる自由を惜しんだからだった。
4歳児はまだ手がかかる。男の子で活発な性質だから、余計に。
しかも、いつもそうなのだが、実家に夫を連れてくると、なぜか父と夫の両方のご機嫌が気になって、気疲れしてしまうのだ。
ここは開成山公園といって、このあたりでは最も大きくて設備が整った公園で、帰郷のたびに訪れている。コンビニに行くには、公園の中を突っ切った方が近い。来るときも園内を通り抜けた。
帰るときは、まっすぐ通り抜けるのではなく、もう夕方だけれど、雨も止んだことだし、園内をひと巡りしようと思ったのだ。
まさか、健朗に見つかってしまうなんて。
走って帰り、すぐに父と夫に事情を説明した。
夫には、とうの昔に健朗の件は打ち明け済みだ。彼は顔色を変えた。
「大変だ。あとで来るって言ったんだろう?」
緊張と不安が声や表情に現れている。もしかすると、この中で最も怖がっているのは夫かもしれないと、ふと思った。
夫は健朗に会ったことがないから、わからないのだ。
喧嘩になったら熱心にジム通いしている夫の方が強いに決まっている。
健朗は、片足を少し引きずっていて、体を鍛えたことはない。ヒョロヒョロしているし、おとなしそうな男だから、実際に見たら、夫は拍子抜けするだろう。
……と、思ったのだが、健朗と何度も向き合ったことのある父が、今にも卒倒するんじゃないかと思うほど青ざめて、驚いたことにガタガタと体を震わせているではないか。
「なんでそこまで怖がってるの? 今はこの人(夫)もいるんだし、また居座ろうとしたら、今度こそ警察を呼ぼうよ? おかあさんが反対するからしなかったけど、あの頃だって通報すればよかった……」
「そうじゃない!」
「えっ? 何?」
「そうじゃないんだよ! ……本当に健朗くんと会ったのか? 間違いなく健朗くんだったか?」
「そうよ? 会話したんだから人違いなんてありえないでしょ!」
父は激しく首を横に振った。
「そんなはずはない! だって満奈美……健朗くんは津波で死んだんだから!」
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2024.10.02 20:00心霊本当にあった「別れた男」のゾッとするほど怖い話! 執念、霊、とぐろを巻く蛇…川奈まり子の実話怪談「再会」のページです。3.11、元カレ、怪談、川奈まり子、情ノ奇譚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで