本当にあった「別れた男」のゾッとするほど怖い話! 執念、霊、とぐろを巻く蛇…川奈まり子の実話怪談「再会」

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画像は「Getty Images」より引用

 健朗の死について両親が知ったのは、結婚式の後のことだったという。

 つまり震災の翌年だ。

 3.11のとき、健朗は海から遠い県中の郡山を離れて、いわき市の沿岸部にいた。3月初旬から親戚の家に居候しており、地震の後になぜか一人で外に出て、津波に呑まれたようだ。郡山の両親が現地に行って探したが、健朗は見つからず、多くの行方不明者のうちの1人になった。

 彼の遺体と死因が確認されたのは、震災からだいぶ経った頃だという。

 遺体の損傷は激しかったが、傷の大半は死後についたもので、溺死したことは明らかだとされたそうだ。

「おまえたちの結婚式が済んで、こっちに戻ってきて2、3日したとき、突然、健朗くんのおかあさんから電話をいただいて、経緯を知ったんだ。……淡々としておられたよ。魂が抜けてしまったようでもあって、お気の毒だった」

「どうして今まで黙っていたの?」

「ハネムーンに水を差してしまうからね……。おかあさんと相談して、満奈美ひとりと会う機会に伝えることにしたんだが、おまえはすぐに子どもを授かっただろう? 妊娠中には話しづらかった。赤ん坊を懸命に育てている最中も言いづらかった。その後はいつも家族と一緒で、満奈美だけになる時間なんてなかったじゃないか? そのうち、おかあさんが、満奈美から訊かれないかぎり、健朗くんのことは話さなくてもいいんじゃないかと言いだした」

「……そう。わかった。あの人は津波で死んだのね」

 だからあんな恰好で夢に出てきたのか、と、合点がいった。

 震災後に見た悪夢に現れた健朗。濡れそぼち、髪からも服からも水を滴らせ、ブヨブヨの死体になって、この家にやってきた、あの姿。

「あっ!」

 急に怖ろしいことを思い出して、叫んでしまった。

「何? どうした?」

「健朗が来ちゃう! さっき、あとで会いに行くよって言ってたんだから!」

 その途端、玄関の方から大きな物音が……。

 扉が乱暴に戸袋に叩きつけられる音だ。

 悲鳴を抑えられなかった。と、同時に、子どもが泣きながら部屋に駆けこんできた。

「オバケがいるよ!」

 すぐに夫が玄関を見にいった。彼に「ここに居て」と言われたから、子どもを抱きしめて、なんとかして不安を抑えようと努めた。

「ママがついてるし、おじいちゃんもパパも一緒にいるから、大丈夫よ」

 しかし、間もなく戻ってきた夫の怯え切った顔を見ると、何か悪いことが起きたのだと察するよりほかなかった。

「玄関の三和土が水浸しに……」

 全部聞く前に、頭の芯が昏くなって倒れてしまった――

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