「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」本当にあった愛人の怖い話! 父の美しい愛人、狂いゆく母…怪談『水の女』!

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川奈まり子の連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。

画像は「Getty Images」より引用

【二十九】『水の女』

 韓国の首都・ソウル。その中心を東西に貫く漢江(ハンガン)の河岸は緑豊かな公園に囲まれ、川沿いには眺望の良い高級マンションが多い。

 上野知美さんが小学4年生のとき連れてこられたのも、漢江の河岸に建つ真新しいマンションだった。

 それは今から20年ほど前のことで、当時としては高層の建物の13階に、知美さんたち家族が住む部屋があった。

 家族……と言っても、彼女のうちには少々、普通ではないところがあった。

 まず、知美さんにとって父親とは、ソウルに来るまでは、近所の写真館に飾られたパスポート写真の肖像に過ぎなかった。

 生まれてこの方暮らしていた東京の家と公立小学校を繋ぐ登下校路の途中に、古い写真館があった。そこの店先のショーウィンドウに、パスポート写真を何十枚と碁盤の目のように並べて台紙に貼りつけたものが展示されていた。

 その中に、知美さんの父の肖像写真があった。

「ほら、これがパパよ」

 物心ついた頃から幾度となく、母にそう教えられてきた。ショーウィンドウのガラスに突き立てられた、母の細い人差し指。その先にある、ひとりの男の顔。

 小学校に通い出してからは、写真館の前を通るたびに、父の顔を探すのが知美さんの日課になった。

 そうやって、長年、彼女にとっては、縦45mm・横35mmの中に納まった男性の肖像が父であり続けていたが、ある日突然、母がソウルで父と一緒に暮らすことになったと言って、あれよあれよという間に韓国に移住することになり、初めて父に対面した次第である。

 しかしソウルで会ってみたら、日に日に色褪せていく写真館の肖像写真がむしろ懐かしくなるような父だった。

 まず、ほとんど家に帰ってこない。いや、数日置きにこっそり帰宅するのだが、時刻は決まって午前3時頃以降であり、しかも帰るや否や母と大喧嘩を繰り広げて、またプイッと出ていってしまうのだ。

 未明に、母が金切り声をあげて泣き叫び、食器や花瓶が壁に投げつけられて割れて飛び散り、父が恐ろしい声で怒鳴り……。

 嵐が静まるまで、横で寝ている妹に子守唄を歌ってやったり、耳を塞いであげたりしたが、知美さんは、日増しに心が重くなることを止められなかったという。

 ソウルの住まい自体は、大理石のバスルームが2つあり、各部屋にクリスタルガラスのシャンデリアが付いた、たいへん贅沢なものだった。

 しかし、そこで知美さんは幸せを実感したことが一度もなく、かと言って不幸とはどういうものか知らず、ただ、両親に可愛がってもらいたい、せめて叱らないでほしいと願うばかりだったという。

 知美さんは私にこう語った。

「母は、私がごく幼い頃から体罰を躊躇しない、怖い人でした。

 そして父は……おまえさえ居なければ、と、私に言いました。でも母からも何度も同じことを言われていたんですよ? 私はあそこで死んだほうがよかったのかと、ずっと悩んで今日まで来ました」

 ――あそこで。

 それはどこなのか、何があったのか。待ち構えながら、私は彼女の話に耳を傾けた。

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