伝説のパンクバンド 「ザ・スターリン」の同窓会ライブに潜入! 生豚のアタマが現れ…「臓物が飛んでくるのか!?」

ザ・スターリンY(Vo.いぬん堂社長。B.チヒロン様)

 この日のイヌイ・ジュンは本気だったと言える。そのエネルギーは凄まじいものがあり、ボロ布のようになるまでカラダを張ってブチかました。そこには、還暦になったばかりの人間とは思えないような狂気があった。MCでは、ミチロウが「金玉がひとつしかない」ことを暴露して観客を驚かせてもいた。

 で、「事件」は起こる。あの“ブツ”が登場したのだ。インディーズのレコード会社を経営するいぬん堂社長が生豚のアタマを持ってステージになだれ込んで来たのだ。「おい、あれ投げるのか!?」、「臓物が飛んでくるのか!?」……期待と不安が会場を支配する。数々の異名を持つパンク・バンドであるザ・スターリンの“象徴”となっているのは、生豚のアタマだ。80年代初頭のステージでは、これを観客に向かって投げつけていた。いぬん堂社長は、「肉」と「ブタに真珠」を歌った。

 この日行われたギグは、感動的なものだった。曲を聴きながら30年以上前の光景が何度も瞼の裏側でシンクロしてしまったからだ。「今日は来て良かった!! 本当に来て良かった!!」と何度も思った。締めくくりの「仰げば尊し」~「アーチスト~マリアンヌ」にも感動した。

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ザ・スターリンY(Vo.村上豪)

 遠藤ミチロウが自身のパンク・バンドであるザ・スターリンを結成したのは、80年のことになる。破天荒なライヴ・パフォーマンスや過激な歌詞、言動で社会を揺さぶった。ステージでは、真っ裸になって暴れるだけではなく、女性客にフェラチオをさせたこともあった。放尿したこともある。観客に向かって生豚のアタマやその臓物、ゴミなどを投げつけたりもした。ライブハウスは、修羅場と化していた。

 もちろん、観客の方も大人しくしてはいなかった。無断で消火器を持ちこんだ観客は、その薬剤をブッ放していた。爆竹に火をつけてステージに投げ込んだり、カミソリの刃を投げたりする者もいた。筆者のカメラも消火器の薬剤を浴びてメチャクチャになった。

 82年4月9日に横浜で行われたギグでは、アンモニア(一説では硝酸という説も)と思われる液体がブチ撒かれている。このときは、それがミチロウの目に入り、翌日のコンサート終了後に救急車で運ばれるという「事件」も起きている。筆者は、偶然にもその両日会場にいたが、ミチロウが救急車に乗せられたときは、言葉がなかった。興奮した観客がミチロウに殴りかかることは、日常茶飯事で、この年には、都内にあるライブハウスを締め出されている。

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