【大麻鼎談】医療用大麻使用で逮捕された末期がん患者を追った映画の裏側を暴露! 高樹沙耶×石丸元章×吉岡敏朗「公平な大麻議論」

◎「大麻を映画の主題にするので、撮影にはいつも慎重に注意を払っている」(吉岡)

石丸 医療用大麻という、日本における“違法物”を映画として撮影して公開するうえで、気を使ったことはありますか。

吉岡 あります。医療大麻にはいろいろな意見がありますよね。映画として描くときは、慎重にやらなければならない。

高樹 はい。

吉岡 ですからこの映画もまた、完成までに時間をかけた製作日程を考えていました。完成させるのも公開も、もう少し先の予定でした。

石丸 なるほど。

吉岡 たとえば、主人公の山本さんが大麻を栽培して、乾燥させて、吸引するシーンなどは――大麻、医療大麻が海外でどう扱われているかなど、丁寧な解説を入れていかないと、情報が少ない現状の日本の人達へ誤解をあたえてしまう可能性がある。

高樹 誤解、というか、恐ろしいものという教育が強すぎて拒否反応というか嫌悪感を与えてしまうという心配がある。

吉岡 ですね。ですからこの映画でも、完全合法化されているカナダや、州ごとに解禁されているアメリカなど、合法化されている海外の国々の状況を伝える映像を加えたほうがいいと考えていたんです。

石丸 なるほど。映像で見ると伝わりますよね。

吉岡 ところが……今年の正月、違う世界の声を聞ける方から、2016年に58歳で亡くなった山本さんから「はやくつくってほしい」というメッセージが届いていると伝えられたんです。

石丸 ええええ!

吉岡 山本さんの遺言は、「監督!俺が死んだらいつか映画作ってくれよな」だったんです。ところが、今年に入ってコロナ禍が起きて、海外での撮影がいつ再開できるか見えなくなってしまった。

石丸 たしかに。

吉岡 それで、医師の正高祐志さん、福田一典さん、弁護士の亀石倫子さんたちに取材をして、医療用大麻の情報に詳しくない日本の人達の誤解をなるべく受けないようにして――山本さんの命日、7月25日までに、何とか完成させました。

高樹 正高先生、亀石先生はこの連載にも登場していただいて、それぞれの立場で大麻の対話をしていただきましたよ。

吉岡 はい。お二人とも医者、弁護士という立場から、大麻についてはっきりとした意見を持ってらっしゃいますよね。この映画のテーマは医療大麻ですが、より大きなテーマは”生命のメッセージ”です。日本での大麻、医療大麻についての議論は今も遅々として進まず、逆風にさらされていますが、正面から取り上げることで、逆に突破口になるのではないかとも考えています。

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