【春日武彦×末井昭の新連載】猫と母 ― この謎多き存在を徹底考察&ほっこりニャン写真も♥


  • 【新連載】猫コンプレックス 母コンプレックス――異色の精神科医・春日武彦と

伝説の編集者・末井昭が往復書簡で語る「母と猫」についての話

<第1回 末井昭→春日武彦>

■■猫と話す■■

 春日武彦さま 
 本屋Titleで春日さんとトークイベントをやらせていただいてから、もう1年3カ月経ちます。お変わりありませんでしょうか。年を取るとともに時が経つのが早くなり、1年2年はあっと言う間に過ぎてしまい、気が付いたら72歳になっていました。

 東洋医学では、男性は8の倍数(女性は7の倍数)で体調の変化が訪れると言われているそうです。72といえばまさに8の倍数に当たります。

 体調の変化とは関係ないかもしれませんが、8年前に会社で不祥事があり、責任を取って会社を辞めました。その8年前には、大腸癌になって手術をしました(正確には若干ズレていますが)。そのまた8年前には、先妻の元から家出をして、2年後に離婚しています。ぼくの場合は体調の変化だけでなく、8の倍数年齢が人生の節目になっているような気がします。

 今年も、何か悪いことでも起こるんじゃないかとビクビクしていたら、コロナ禍になりました。「ほら、やっぱり」と思いましたが、コロナ禍は僕だけに起こったことではなく、全人類に関わる大きな災いです。

 個人的に起こったことといえば、心拍数が143になったことがありました。それは数分で収まりましたが、血管攣縮性狭心症の持病があるので、念のためS病院でエコー検査をしたり、ホルター心電図検査をしたりしましたが、異常は見付かりませんでした。

 コロナ禍の中、まだまだ何が起こるかわかりませんが、体に気を付けてなんとか逃げ切ろうと思っている今日この頃です。

 緊急事態宣言が発令された頃、美子ちゃん(妻です。いつも呼んでいる通りに書かせてもらいます)から外出禁止令が出されて、映画にも本屋にも行くことができず、仕事の依頼もほとんどなかったので、これを機に本でも読んでみようと、庭に面した部屋で、午前中は本を読むようになりました。その部屋は陽射しがあってポカポカ暖かいので、本を読んでいるうちに、ついつい居眠りをしていることもありました。

 寝ぼけ眼でふと庭に目をやると、見たことのない茶トラの猫が庭石の上に座って、じっとこっちを見ています。野良猫は庭によく来るので、それほど珍しいことではないのですが、ほとんどの野良はこっちと目が合うと逃げてしまいます。しかしその茶トラは、こっちが目を逸らしても、5分でも10分でもじっと見つめているのです。

 ぼくは人から見つめられることが苦手で、それは猫でも同じです。いつまでもじっと見つめられると、何かあげないといけない気持ちになってきて、台所に行ってキャットフードを皿に入れて、その茶トラの前に置きました。茶トラはしばらくこちらを見ていましたが、視線をキャットフードに移すと、もの凄い勢いで食べ始めました。お腹が空いていたようです。食べ終わるとちらっとこっちを見て、スタスタどこかに行ってしまいました。

 そのうち、その茶トラは毎日朝昼晩と来るようになり、外飼いの猫のようになりました。黄色っぽいオスの猫なので、〈キー坊〉という名前にしました。スマホを向けて写真を撮ろうとすると、三つ指を付くように前足を揃え、そこに長い尻尾を巻き付け、胸を張ったようなポーズを取ります。いかにも「さぁ、撮ってくれ」という感じです。それが可愛くて〈キー坊〉が来るたびに写真を撮るようになりました。

〈キー坊〉お得意の三つ指尻尾巻きポーズ


 その写真にコメントをつけて、毎日ツイートしていたら、たくさんの「いいね」をもらうようになり、「キー坊、可愛い♡」とか言う人もいて、写真にも熱が入るようになりました。そのうちどこかの出版社から、〈キー坊〉の写真集の注文でも来ないかなと思っていたら、春日さんと「猫と母」について往復書簡をしませんかという依頼が来て、〈キー坊〉が取り持つ縁でこの連載が始まることになりました。


 春日さんは愛猫家で、『猫と偶然』(作品社)という著書もあります。ちなみに、春日さんが飼われている〈ねごと〉君も、偶然キー坊と同じ茶トラです。

猫と偶然

 何も決めないまま、成り行き任せで始まりましたが、猫を介して、どんな話に展開して行くのか楽しみにしています。

 最初に何を書けばいいのか迷いますが、とりあえず、我が家の猫事情について書いていきたいと思います。

 現在我が家には、〈ねず美〉と〈タバサ〉という2匹のメスの猫がいます。〈タバサ〉は〈ねず美〉の子どもで、〈ねず美〉は現在18歳で、〈タバサ〉は17歳です。人間でいえば88歳と84歳だそうです。いつ死んでもおかしくない年齢です。

 2匹ともほとんど一日寝ています。〈キー坊〉に目が行くようになったのも、2匹が寝てばかりいるということもあるかもしれません。

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