コンタクトレンズが誕生した裏歴史を亜留間次郎が解説! 差別、偏見、魔女狩り、天皇、シャーロックホームズ…!
信憑性の怪しい調査報告のせいで、色覚異常者の排除が欧州全体へと波及しました。
死者をろくな根拠もなく色覚異常扱いして責任をなすりつけたホルムグレーン博士のやらかしは、非常に深刻な被害を現代まで与え続けています。
スウェーデンでは、鉄道会社や船会社が色覚異常のある運転手や船員を全員解雇しました、判定法はホルムグレーン博士が考えた色のついた毛糸を使ったテストです。翌1876年からスウェーデン軍が色覚異常者の軍入隊を禁止すると、ドイツでも1879年に排除を始め、事故から5年とたたずに欧州全土で色覚異常者が排除されるようになりました。遠く日本でも色覚異常者の排除を1910年から実施するようになりました。
当時の一般人には、ただ視力が悪いのと色覚異常の区別がついていませんでした。漠然と「目が悪いとダメ」みたいな認識でしたが、次第に目が悪いことが人殺しの異常者みたいに言われるようになり明治の終わりから世界中で色覚異常者の魔女狩りが始まりました。
ここで困ったことになったのが、ドレスで着飾り、社交界で白馬の王子様(リアル)を捕まえようと頑張っている女性達でした。目が悪い女性は嫁の貰い手が急速に無くなっていったのです。
既婚者でも目が悪いと子供が障碍者じゃないかと悪い噂が立つようになりました。色覚異常とは関係なしに、眼鏡をかけていること自体が社会的に不利になったのです。
日本でも大正時代に、当時の皇太子(後の昭和天皇)の婚約者(後の香淳皇后)に対し、兄である久邇宮朝融王に色覚異常があることを理由に「婚約破棄しろ」と迫った宮中某重大事件が起きています。
こうして眼鏡は10年とたたずに知性の象徴からダメ人間の装備に転落してしまいました。かといって、眼鏡をかけていないと良く見えないし、目を細めると人相が悪くなるので目の悪い女性は非常に困りました。
ここで流行ったのが、現代でもよくある視力回復トレーニングです。目の良くなる目薬などが高額取引され、眼科医の収入は増加しましたが、まともに効く薬はありませんでした。
仕方がないので目が悪い人はオペラグラスみたいな横に手で持つところが付いた、必要な時だけ取り出して手で持って使うメガネを使いました。オペラグラスなら持っていても不自然じゃなかったからです。
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