LSDを摂取してトリップした動物たち5種類のヤバい変化!後向きに泳ぐ魚、猫の異常反応…

3. 熱帯魚:後向きに泳いだ

 特定の種類の熱帯魚は、LSDを与えられると暴れまわることが知られている。

 1954年、CIAの悪名高い秘密のLSD実験「MK-Ultraプロジェクト」に関与した医師のハロルド・アブラムソン、そしてコールド・スプリング・ハーバー研究所の研究者ルウェリン・エバンスは、ベタ(Siamese Fighting fish)と呼ばれる数匹の熱帯魚にLSDを投与した。その後まもなく、ベタは水槽の上部に縦向きに浮かび始めた。それだけでも十分に奇妙な眺めだが、ベタはまた螺旋を描いて泳ぎ始め、その後、後ろ向きに泳ぎさえした、という。

画像は「Wikimedia Commons」より

 2人の研究者は、なぜベタが奇妙な泳ぎ方をし始めたのかわからなかったが、その動きはベタ特有の行動のようだという。なぜなら、その後研究者チームは、ベタ以外の30種類の熱帯魚にLSDを与えて追跡調査を行った。しかし、このような奇妙な反応を見せるのは、ベタだけであったという。

 これらの魚がサイケデリック体験をしているのか、LSDによって単に神経系を混乱させたのかは知りようがないが、魚が後ろ向きに泳ぐのを見ると、研究者は実際にサイケデリック体験をしているのではないかと感じたそうだ。

4. 蜘蛛:より良い巣を紡ぐ

 ドイツの薬理学者ピーター・ウィットの蜘蛛の研究は、同僚に楽をさせる目的から始められた。

 1940年代後半、ドイツの動物学者ハンス・ピーターズは、蜘蛛の巣が作られる過程に関するドキュメンタリーを撮影したいと考えていた。しかし問題は、ほとんどの蜘蛛は午前2時以降の未明から早朝に、巣を作ることだった。

 多忙で徹夜をするのが無理だったピーターズは、同僚のウィットにクモに何かを与えて、まともな時間にクモの巣を作らせることできないかと頼んだ。

画像は「Wikipedia」より

 ウィットはコーヒー、ベンゼドリン、マリファナ、その他の物質を与えることで、蜘蛛のルーチンを調整しようとしたが、どれも効果はなかった。しかしこの試みでは、蜘蛛がさまざまな物質を与えられることによって、通常とは違う奇妙な巣を作るという事実が発見された。

 ウィットによれば、少量のLSDを与えられた蜘蛛は、よりきれいで整った巣を紡ぐという。1948年、ウィットは砂糖水にLSDを注入した溶液を、喉が渇いたコガネグモに与えてみた。低用量のLSDを摂った蜘蛛は、通常よりもはるかにうまく左右対称の蜘蛛の巣を作った。しかし高用量のLSDを摂った蜘蛛は、逆に巣をうまく作れなくなった。

5. 悲劇的な象の物語

 LSDを使った動物実験で、最も物議を醸しているものに、タスコという3トンのオスのアジアゾウの実験があった。

画像は「YouTube」より

 ルイス・ジョイロン・ウェスト博士のチームによって、この実験は1962年に米オクラホマ大学で行われた。博士の実験意図は、LSDによってタスコに発情期が訪れるかどうかを確認することであった。オスの象の発情期は、テストステロンの産生が高まり、攻撃性が高い時期だ。しかし博士がなぜ発情期に限定して興味を持ったかは不明である。

 研究グループは、象にとっても多すぎると思われる297mgのLSDを注射した。

 5分後、タスコは大声で鳴き、倒れ、排便し、激しく痙攣し始めた。タスコの瞳孔は開き、脚は硬くなり、舌を噛み、呼吸困難に陥った。ウェストと彼のチームは、タスコを助けようとしたが、状態は悪化するばかりだった。

 タスコを落ち着かせようとして、大量の(そして間違いなく多すぎる)抗精神病薬のソラジンが注射されたが、それによって血圧が大幅に低下し、動悸を誘発させてしまい、数分後にタスコは死んだ。

 ウェスト博士と研究チームの愚かな行動は、サイケデリックスの研究にとっても悲惨な結果となった。この悲劇的な実験の後、LSD反対派は、LSDが危険な物質であることの証拠として、この研究をしばしば例に挙げた。

 しかし、ガーディアン紙のピルキントン記者は、「実験はLSDの毒性の証拠として引用されているが、象を殺したのはLSDではなく、ソラジンまたは薬物の組み合わせの可能性が最も高いようだ」と述べている。この証拠に、1984年に心理学者のロナルド・K・シーゲルは、LSDのみを使用して、2頭の象で実験を試みたところ、2頭とも生き残った。

 LSDと薬剤の危険性を知らしめる結果となったウェスト博士の研究は、象を殺しただけでなく、「PTSD、重度のうつ病、末期症状の患者にLSDは効果がある」という主張も否定されてしまう結果となった。

 LSDを動物に与えるというこれらの実験は、動物にとっては虐待でしかないだろう。とりわけ、実験の意図も明確でないのにLSDを与えられて殺された象は、哀れというしかない。

参考:「DoubleBlind」、「Vice」、「The Guardian」ほか

文=三橋ココ

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