【実録オカルト事件簿】男の首を引き抜きしゃぶった鳥取県「山童(やまわろ)の怪異」! 異形の民“低身長の人食い種族”か=鳥取県

――その怪物の正体は分かっているのですか?

『幻の漂泊民・サンカ』(文藝春秋)

(神ノ國ヲ) 実は九州では「秋の彼岸に河童が山に入って山童となる、春の彼岸に川に戻ってくる」と言われています。各地に残る「山男/山人」伝説、中国の伝承「山操」とも似ています。または天狗にも重なる「難破、漂着した西洋人が山間部で暮らしていた」説もあります。また「予言獣アマビエ」との共通点を指摘する研究者もいます。民俗学者・湯本豪一いわく、肥後国天草郡の山中に3本足の「山童(やまわらわ)」が現れて豊作と疫病について予言した、というケースです。

 本来、怪異とは曖昧模糊としたものですから、その正体は判りません。しかし、よくよく考えてみると、まず「彌六と山童」は、どうにも独特なのです。まず九州ではなく、鳥取の事件です。さらに、この「山童」は「女を嫌う」という山林系の怪異の特徴を備えています。同時に「河童」と同じように人間の生活に隣り合わせで、ときには助力となる存在です。しかし、河童は「女好き」ですし、ときに「河童の子」が生まれてもいます。

――すると、「山童」は河童ではないと?

(神ノ國ヲ) 1950年代に、丸山学『山童伝承の分布』『山童傳承の展開 : 山岳信仰への一つの接近』、2013年に、椎名愼太郎『河童の姿を追って : 民俗伝承に見る庶民の心』という研究があります。「河童」伝説の核として河川敷に住み、当時差別を受けた「川の民」を想定するように、「山の民」から「山童」を考察することも可能です。

 しかし、鳥取で彌六を食い殺した山童は、伝説として広がった河童でも山男でもない、また芥川龍之介が描くユーモラスで親しみやすい存在でもありません。何か別物ではないのか。1712年、最初の「河童」記録である寺島良安『和漢三才図会』では、「山童」は川太郎(河童)と同類で「人の舌を好んで食し、尻から血を吸う怪物」です。彌六を食い殺した「山童」に記述が合致するのは偶然でしょうか。仮説に過ぎませんが、日本には低身長で人肉も食す「山の民」がいたのではないか。しかし差別されて歴史の闇の中に葬り去られた可能性は否めません。

文=神ノ國ヲ

学術論文からオカルト記事まで。
京都大学の博士課程に所属中。
Twitter:@kmnknw

神ノ國ヲの記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.11.14 23:00心霊
彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.30 23:00心霊
深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.16 20:00心霊
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

【実録オカルト事件簿】男の首を引き抜きしゃぶった鳥取県「山童(やまわろ)の怪異」! 異形の民“低身長の人食い種族”か=鳥取県のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング17:35更新